幻月87

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「着いたら電話しますんで、冷めたらチンして食べてください」
「わざわざすまなかったな」
 工藤が平造に労いの言葉をかけた。
 良太が一緒に駐車場まで行くと、平造はグレーのバンに乗り込んだ。
「気を付けて。ちゃんと連絡下さいよ」
「社長、よろしく頼む。食事は三人分くらいはある。良太も痩せただろう、しっかり食べなさい」
「はい、ありがとうございます!」
 平造の車が出ていくのを見送った良太は、オフィスへと取って返した。
 工藤はまだ電話中だったので、七階に上がると、良太は工藤の部屋を覗いてみた。
「うわ、すげ」
 ダイニングテーブルには、二人分のディナーがセットされていた。
 洋ナシと生ハムのサラダ、ジェノベーゼのパスタ、牛肉のタリアータ、鍋にはメバルやイカのブイヤベース、ワインクーラーにはワインが冷えているし、冷蔵庫を見るとパンナコッタがグラスに五個ほどが並んでいる。
「パスタと肉は食べる時あっためよ」
 良太は何となくウキウキとオフィスに戻ったが、工藤は自分のデスクでまだ難しい顔をして電話をしていた。
 メールチェックをして翌日のスケジュールを再確認すると、良太はパソコンの電源を落とし、デスクの上を軽く片付けた。
「食事いつにしますか? 平造さんせっかく作ってくれたんだし」
「七時でいいだろう。あと何件か片付けとくことがある」
 やっと受話器を置いた工藤に尋ねると、工藤はそう言ってすぐまた鳴った携帯に出た。
「じゃ、俺、準備しときます」
 七時ならまだ一時間ちょっとあった。
 良太は自分の部屋に上がり、猫たちのご飯をやったりしてから、シャワーを浴びてジャージに着替えると、いそいそと工藤の部屋に向かう。
 冷蔵庫には翌朝用にサンドイッチも作ってあった。


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