幻月89

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「何をイラついてるんだ?」
 警察の対応を思い出して、フォークとナイフを握りしめて眉を顰めている良太に気づいて工藤が言った。
「だって、あの警察のやつら! 申し訳ありませんって謝罪したの、渋谷さんと橋本さんだけだったんだ。ふざけるなって!」
 工藤はフンと鼻で笑った。
「警察なんざそんなもんだ」
「千雪さんがボロクソに警察を罵倒してたの、ホント全く同意だ!」
 思わず良太は肉にナイフを思い切り突き立てた。
「あいつも昔、容疑者にされて事情聴取されたからな。しかもその時のバカ面の刑事がよく調べもしないで頭ごなしだった」
 それを聞いて良太は、あれ、と思う。
「その時のこと知ってるんだ?」
 問われて工藤は口が滑ったことに気づいた。
 その時千雪のアリバイを証明したのが工藤で、アリバイというのが軽井沢に千雪を連れて行ったからだった。
「京助と俺がたまたま事件に関わっていて、千雪のアリバイを証明したからな」
 工藤はニヤリと笑う。
 言葉上ではウソはない。
 千雪のアリバイを証明したのは工藤だけだったのではあるが。
「フーン。その時容疑者扱いしたの、渋谷さんだったから、千雪さん、渋谷さんに対してきっついんだ?」
「まあ、渋谷は当時まだ駆け出しだったからな。だが、それでもその事件の真犯人が知り合いの刑事だったことを突き止めたんだ」
「ええ? 刑事が犯人? それもう終わってますよね。ってか何で、千雪さんが犯人にされちゃったんですか?」
「警察が無能だったからだろ」
 正直、工藤はこの話題はもうこれくらいにしたかった。
 藪をつついて蛇を出しかねないからだ。

 


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