幻月91

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 良太は慌てて涙を拭う。
「どうせバカだよ、チクショ……」
 良太があれこれと気をもんでいるだろうことはわかっていた。
 工藤の方は、案外規則正しい食事と休息にすらなったせいか、身体も調子がいい状態で出てきたというのに、案の定、迎えに来た良太は見た目にも痩せて、睡眠不足の顔をして、目を合わせると一瞬泣きそうに笑った。
 気を張って、仕事も滞りなく進めていた上に、やるなと言ってはいそうですかと聞くような良太ではないことはわかっていたが、千雪らと事件のあらさがしまでしていた。
 工藤は良太を引き寄せて唇を重ねた。
 本当にここにいるのだと確かめるかのように、良太は工藤の首に腕を回した。
「もう会えなかったらどうしようって……」
 そんな言葉が口をついて出る。
「ばーか、んなわけないだろ」
「万が一とか、言うなよぉ……ばっきゃろ……」
 そんな良太が可愛いと思わずにいられない自分を笑いながらも工藤はソファに良太を押し付けてさらに口づける。
 この際、工藤を檻の向こうに追いやろうとした組の抗争絡みの連中も無能な警察を罵ることもどうでもよくなって、そのまま良太の寝巻用ジャージを取り払うことにした。
 臭い飯をこれ以上食いたくなかったのは、良太に会いたかったからだ。
 おそらく表面上は会社を守らねばとか強がって一人前の振りをして、歯を食いしばっていてもどうせ、一人の時には猫を抱いてメソメソしているだろう良太を抱きしめたかった。
 やっぱり少し痩せてしまった身体の首筋や胸や背中をさすりながらしばらく煽ってやれば、良太は色づいた声をあげながら、工藤に縋り付くように熱くなる。
「はあ………ん……! くど……」
 その中にゆっくり腰を進めて揺さぶると、良太は容易くはててしまう。
 掠れた吐息がたまらず工藤をもひどく刺激する。 
 
 

 


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