リビングではちょうど公一を手伝って宇都宮や京助の友人で華道家の五所乃尾理香やその友人の友田彩佳がテーブルやいすを移動させたりして、食卓を作っているところだった。
そこへ千雪がやはり京助の友人の速水と一緒にカセットコンロやグリル鍋を運んできた。
いくつかのテーブルにそれぞれ電気プレートと鍋を設置していく。
秋山は手慣れた様子で、バーカウンターの前のテーブルにグラスなどを並べていく。
そろそろ八時半になるという頃、二階からアスカがフランス人女性のセシルと笑いながら降りてくると、小笠原が美亜と一緒にその後から現れた。
風呂掃除をしていた面々も次々と降りてきたところへ、キッチンから千雪や公一らが大きめの土鍋を手に現れて、それぞれのテーブルに設置されているコンロの上に置いて行く。
六つのテーブルに土鍋がセットされると、今度は大皿に盛りつけられた野菜や肉、魚などが運ばれ、京助が大きめのポットに入っただし汁をそれぞれの鍋に入れていく。
それぞれのテーブルで鍋の種類が違い、鍋に合わせて京助が下拵えをしていった。
「お待たせしました。奥から、すき焼き、土手鍋、キムチチゲ、豆乳鍋、寄せ鍋、もつ鍋と、それぞれいろんな鍋があるので、そっちのテーブルから器と箸、カウンターバーから好きな飲みのもを取って、好きな鍋に集まって始めてください」
「うわあ、うまそお!」
「どれもこれも捨てがたい」
「これ、入れちゃっていいの?」
京助の説明が終わると、あちこちで歓喜の声が上がり、みんながテーブルに散らばっていく。
必然的に鍋奉行役になる者がいて、それぞれの鍋が仕上がっていく。
ちょっと作り方が面倒なかきの土手鍋は京助が受け持ち、すき焼きは研二が受け持った。
キムチチゲは洋子が受け持って手早く仕上げていく。
「え、宇都宮さん、手慣れてる~!」
宇都宮が豆乳鍋を慣れた手つきで作っていくと、取り囲んでいた理香、彩佳、それに恵美といった女性陣から歓声があがる。
工藤はまだ戻って来ない良太が気になっていたが、「どうぞ」と秋山から熱燗が入ったグラスを渡された。
「ぼんやりしていると食べ損ねますからね、すき焼きから行きましょう」
秋山はぐつぐつといい音を立て始めたすき焼き鍋から取り皿に取り分けて、工藤に渡した。
「おう、すまん」
「あ、大将、まだ良太とかもどってけえへんの?」
皿に取ったすき焼きをぺろりと平らげ、辻はジョッキのビールを半分ほども飲み干した。
「ああ」
「俺、レストランに荷物運び入れてすぐ戻ってきたんやけど、何や、プレゼントをどこに置くかとか、サプライズどないするみたいなことオーナーと話しとったな」
「平さんだから、あんまり派手なのは好まないでしょうし、良太の腕の見せ所ですね」
秋山が含み笑いをする。
「何だ、そんな大掛かりなこと考えているのか?」
工藤は怪訝な顔をする。
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