花さそう5

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 そんなこんなでも、サービスエリアを出てから一時間半ほどで車は軽井沢に入った。
 辻のスムーズな案内で、一行はやがて綾小路の別荘に着いた。
 すぐに門が開き、中に進むと、辻の車はエントランスへと向かう。
「俺、荷物降ろすの手伝いますから、ここで降ろして、この車、荷物乗っけてないから、駐車場行ってください」
 良太に言われて工藤は良太を降ろし、駐車場の方へとハンドルを切った。
「今年もよろしくお願いします」
 エントランスに駆け寄ると、良太は出迎えた紫紀の息子大と綾小路家執事の息子の公一に挨拶した。
「今年は一段と賑やかですね~」
 にこやかに良太に挨拶した大学生の大はどちらかというと紫紀よりも京助に似ていて、だが性格は紫紀や京助よりずっといい、と良太は思っている。
 スキーやスノボなどは玄関わきの専用の小部屋に運び込み、工藤が車を駐車場に置きに行った面々と一緒にやってくると、荷物は玄関に置いたままみんなはすぐ近くの客間に通された。
「えっと、去年参加された方はお分かりかと思いますが、一応合宿ということで、基本、部屋の掃除は各々でお願いします。それ以外に、強制ではありませんが、風呂掃除と食事の用意の手伝いができる方はお願いします。男が多いので風呂は大きい方が男性用です」
 大が簡単に施設の使用方法を説明した。
「さっきスキー等の用具を入れた部屋で、器具のメンテなどできますので、各々お願いします。できる方はできない方を手伝ってあげてください。あ、そうそう、あちらでセルフでコーヒー紅茶など召し上がっていただけます」
 大はカウンターに置かれたドリンクメーカーの説明をした。
「あと、部屋割ですが、一応男女別れて一人ずつくじを引いてください。基本二人部屋ですが、奇数人数だと一人の部屋もありです。何か質問ありますか?」
 大は一同を見回して聞いた。
「何もないみたいなので、公一の箱からくじを引いてください。あっと、既に滞在されている方もいるので、よろしくお願いします」
 公一が箱を持ってそれぞれのところへと出向いた。
「そうだ、使用料はいただきませんが、差し入れとかお土産は歓迎します。皆さんで召し上がっていただけるようにここのカウンターとか、リビングのバーとかに置いておきます」
 最後に大が声を張り上げると、男たちの間からどよめきが上がった。
 フン、この手のノリが俺に合うと思うか?
 工藤は後ろの方で腕組みしたまま黙って大の説明を聞きながら自問した。
 ふと見ると、同年代の宇都宮はいつもの人気俳優オーラを消して、すっかりこの輪の中に溶け込んでいる。
 あいつはカメレオンか。
「工藤さん、くじ、引いてください」
 良太の声に横を見ると公一が箱を掲げて立っていた。
「F、ですね」
 工藤が取り出したくじを広げて、公一が言った。
「俺、Gですから隣ですね」
 良太が言った。


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