花を追い19

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「とにかく日下部のあとがま、どうすっかだな」
「早々に何人かリストアップして打診してみます」
「まあ、日下部はな、演技力ってぇより話題性があったからな、俺もやつを投入してどんな反応起きるか楽しみにしてたんだがな……」
 結構主役級の俳優が並んだこのドラマだが、昨今若者のテレビ離れもあり、どれだけ視聴率を取れるかは大きな課題で、人気のある日下部が入ることによって若い女性層にもアピールしようという目論見もあった。
 媒体がテレビだけだった時代とは違い、録画やインターネットなどで放送時間に関係なく見ることができるようになったが、視聴率という目に見えるデータはやはりスポンサーの動向を左右する。
 いい原作、いい脚本、いい役者陣を揃えてしっかり視聴率も取るようなドラマももちろんあるのだが、往々にして視聴率が下がった上がったと一喜一憂しているように思える。
 それより、外野の雑音に惑わされず質のいいドラマを作ればいいのになどと、良太は思うのだが、現実的には視聴率が下がれば打ち切られ、俳優たちがその責めを負わされるという風潮が蔓延している。
 しかもネットでは何かあれば叩く、炎上させる、どこかネガティブな空気に支配されていて、これでは制作側は恐る恐るでしか俳優を使うことができず、俳優の方も二の足を踏んでしまうだろう。
「何か、制作側は無難なバラエティや視聴者を取り込んだ番組作りへと偏ってる気がするし、どこかで打破しないことには質のいいドラマとか作れなくなるんじゃないですかね」
 つい思っていたことを口にした良太は、はっと我に返って坂口の目とあった。
「あ、すみません、勝手なこと……」
「いやいや、いいぜー、良太ちゃん。さすがは工藤のヒゾッコだけある」
「いえ、まあ、最近SNSとか利用して視聴率上げたドラマもありましたっけ」
 それでも最近、SNSやネットを利用して視聴率をあげ、人気が右肩上がりとなって続編も期待されているドラマが出てきた。
 その例にあやかろうと今や制作側もドラマが決まった時点でSNSやネット対応に力を注いでいる。
「そっちは一応頑張ってくれてるみたいだぜ。広報の方が」
「でも、こう、キャストが入れ代わり立ち代わりだとやりにくいですよね~」
「だね~、とにかく良太ちゃん頼みだからよ、ま、そこんとこ、よろしく」
 聞いていて調子よすぎるだろ、と良太は思わず心の中で突込みを入れる。


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