鈴木さんの話では昼におむすびを食べて薬を飲んだらしい。
枕もとのテーブルにはポカリスエットのボトルとマグカップが置いてある。
キッチンに行ってみると冷蔵庫の上にレトルトのおかゆがいくつか置いてあり、ドアを開くと梅干しも入っている。
手に取って、説明書きを読むと、容器に移してレンジで温めるだけと書かれている。
工藤はこれくらいならできるだろうと、適当な器にレトルトのおかゆを移し、説明書きに書いてある通り、レンジの時間をセットした。
やがておかゆが温まると、梅干しのパックとスプーン、箸をトレーに乗せて良太の枕元に立った。
昼に食べたきりならそろそろ食べてもいい頃あいだろう。
「良太」
トレーをテーブルに置いて、良太の額に手を当ててみた。
まだ熱があるような気がしたが、もう一度呼ぶと、良太は目を開けた。
「……工藤さ……?」
「おかゆだ、食えるか?」
良太は頭が朦朧としているものの、言葉は理解して身体を起こした。
「すみません、俺、今日……」
「いいからちゃんと食って薬を飲んでから寝ろ」
「…わあ、ちょうど腹減ってきたとこで………」
トレーを良太の前に置いてやると、そんなことを言う良太だが、食べ始めたようすはあまり食が進んでいるとは言い難い。
それでも梅干しを食べながら、無理無理ほぼおかゆを食べ終えた。
「何か飲むか?」
「あ、ポカリあるんで」
トレーをキッチンに置いて戻ってくると、良太がテーブルから取ろうとしたポカリスエットのボトルを取り上げてマグカップに注ぐと薬の袋と一緒に良太に渡した。
錠剤をいくつかポカリスエットで飲み下すと、「ひと眠りしろ。まだ熱があるだろ」と工藤は良太の手からマグカップを取った。
「はい……」
何か、工藤、えらく優しくないか………?
ぼんやりとそんなことが頭を過ぎったものの、良太は素直に返事をしてまた枕に頭を乗せた。
良太が眠ったらしいのを見ると、工藤はちょこなんと座って見上げている猫たちに気づいた。
「メシか、ああっとこれか」
やはり冷蔵庫の上に置いてあるカリカリを取り上げ、中から小袋を一つ取り出すと、猫たちのお皿に適当な量をカラカラと入れた。
自動給水器できれいな水が流れ出すしくみのようだが、給水器は透明なのでタンクの水の量も確認しやすい。
シンクでおかゆの器などを洗いながら、工藤は食洗機を置くか、などと考えていた。
たくさんの食器を使うわけではないが、少しでも良太にとって時短になればいいと思う。
良太が眠っているのを見て、工藤はコンビニで自分の食料を買ってこようと部屋を出た。
あいつは自分の体力を過信しているから、気が抜けるとああやって寝込むんだ。
全く、昔から学習しないやつだ。
人の健康云々を心配している場合か。
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