ほんの少し届かない15

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「適当に取ってる。俺のことはいい。コーヒーはありがたいが、勤務時間外に気をつかうより、お前こそちゃんと寝ろ。これから年末まできついんだ、倒れられたら困るからな」
 その言い草に、良太はカチンとくる。
「死んでも倒れたりしねえよ! あんた、また最近煙草、吸いすぎ!」
 捨て台詞のように言い放つと、良太は社長室を出てたったか部屋に戻る。
「何だよ! 人が親切でコーヒーいれてやったのによ!」
 何が、勤務時間外にだ!
「俺は別に社長にコーヒーいれたんじゃねぇよ! 工藤に………」
 こうやってまた思い知らされる。
 所詮、工藤にとって良太のポジションはあくまでも社員なのだと。
「ちぇ………」
 一生懸命尻尾を振っているのに、ちっとも飼い主に気づいてもらえないワンコみたいだ。
「ちょっとばかしかわいそ、俺」
 硝子の向こうでは冬の夜を吹きぬける風がわずかばかり葉が残った街路樹を揺らしている。
 ぼんやりと闇を見つめている良太の前で、ガタンと窓が音をたてた。
 

 


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