ほんの少し届かない17

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「わかりました。時間見てできる限りお邪魔します」
「ああ、よかったら、『名探偵コナン』氏にも伝えといて」
 良太はつい笑ってしまう。
 昨年のイブ、たまたま居合わせた千雪もまとめてパーティに連行されて、その時藤堂の中では、千雪の処々の事情から『名探偵コナン』としてインプットされたらしい。
「え~、『コナン』氏は、どうもイブはご旅行みたいですよ、恋人と」
 千雪はあの藤堂さえ魅惑してしまったのかもと、深入りしないうちにと、恋人、とつけ加えた。
「へえ、コナン氏の恋人か、さぞや美人だろうなぁ、あの御仁を相手にするとなれば。う~ん、どうせならカップルできてもらいたいところだが、旅行なら仕方ないな」
 案外あっさりした解答だ。
 やぱり藤堂、常人には計り知れない男である。
 千雪がイブに旅行という情報はアスカからだ。
「毎年京助が強引にユキを連れて雲隠れするのよ、イブには。何もなければね」
 面白くなさそうにアスカが言っていた。
 京助には初っ端からあまりいい印象を持っていないので、心情としては良太もアスカ寄りだ。
 忙しい二人のことだ、想定外の仕事が飛び込んでくることもあるらしい。
 それがたまたま去年のことだった。
「時間があればイブのパーティ、工藤さんも誘っておいで。そうそう、週末の忘年会にはまたお邪魔させていただくからね。今年は何が当たるか楽しみだなぁ」
 おっとそうだった、と藤堂の電話が切れたあとで、良太は年末にかけてのさまざまな雑事のことを思い出してぞっとする。
 その第一弾が毎年恒例の取引業者を招いての忘年会だ。
 会場はいつものように会社の五階にあるリラクゼーションルームだ。
 パーティや接待のために設けられたフロアは、ホテル並みの設備が施してある。
 イタリア製のソファやテーブル、フロアスタンドといった家具や厚い絨毯、照明からバーに至るまでシックで重厚な雰囲気で統一され、なかなか居心地のよいスペースだ。
 ただ、今年はセッティングをサービス業者に任せることになってはいるものの、取り仕切る責任者は良太である。
 料理は老舗ホテルのケータリングサービスを随分前に予約してあるが、派遣されてくるホールスタッフには俄か仕込みの学生バイトなどがいたりするので、気を配る要素は多分にある。
 工藤さんも誘っておいで。
 ふと良太の頭の中に藤堂の言葉が舞い戻る。
 あれって、別に意味はない……よな?

 


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