ほんの少し届かない18

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 二十四日は工藤、名古屋だっけ。
 藤田自動車の会長と会うって。
 世界の自動車産業を牽引するグローバル企業に成長したフジタ、その立役者である藤田栄治郎会長と工藤は東洋商事社長綾小路紫紀とのゴルフの際に顔を合わせ、何でも藤田がえらく工藤を気に入ったとかで、この冬スポンサー契約を取りつけたところだ。
 何時に戻るかもわからないしな。
「なんだい、彼女からイブのデートのお誘い? いいよ、抜け出したって。せっかくのイブなんだし」
 美味そうに煙を吐き出しながら、下柳がにこにこ。
「違いますって。『プラグイン』の藤堂さんですよ」
「藤堂、って、ああ、英報堂の? こないだも仕事でチラッと会ったが」
「あ、そっか、大和屋さんのヤツ? え、英報堂の時の藤堂さん、知ってんですか?」
「ああ、河崎と藤堂といや、あの頃、若造のくせに手がけた仕事は必ず当たる、掃いて捨てる程オンナは群がる、傍で見てるこっちは面白くねぇよ、揃ってええとこのボンでしかもこ憎たらしいことにイケメンでよ」
 眉をひそめて言う下柳を見て、良太は笑う。
「でも、藤堂さん、いい人ですよ、面白いし」
「何、良太ちゃん、そんな、親密なおつきあい?」
 下柳は怪訝そうな顔を向ける。
「親密って程でも……前にCMに出してもらった時もお世話になったし、よくおいしいもの持ってきてくれるんですよ」
「ほお~、何そのパーティってのも、美味いもんあり? 酒も?」
「多分。去年は美味しいシャンパンもたくさん並んでましたよ。あとで小笠原に聞いたら、すんげく高いのばっかだったって。ブブクリコとかドンペリとか。美味しいはずですよね。残念ながらうちの会社の忘年会じゃ、ちょっとサービスできないかな~」
「何だよ、焼酎『隠し蔵』とかないのかよ」
 下柳にとって美味い酒とはどこまでいっても焼酎らしい。
「さあ、名前はわかりませんけど、焼酎もいろいろあったな~河崎さんが焼酎好きらしいですよ。高級ワインかなんか飲んでそうだけど。意外にも」
「おう? なかなかわかるヤツじゃねぇか、英報堂のくせによ。ちっと見直したぜ。ほんじゃ、俺も一緒に行っていんだろ、そのパーティ」
 親交の基準は奥が深そうで、実は案外単純だったりする。
「え、いいですけど、多分……」

 


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