ほんの少し届かない20

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「くっそ、もうこうなったら、俺には有馬記念しかないっ!! サンタさん、どうか俺のプレゼントは万馬券でいいっす……」
「お前んとこなんかにサンタがくるか! とっとと仕事しやがれ!」
 お祈りポーズの石川の後ろ頭を村井がはたいてスタジオに入っていく。
 だよな、んなこと考えてるバヤイじゃないんだってば!
 自分に活を入れてあとに続こうとしたところで、またポケットで携帯が鳴った。
「はいっ、……お疲れ様です!」
 最近携帯の機種変更をした際、社長用着メロをベートーベンからワーグナーの『ワルキューレの騎行』に変えた。
「今夜は札幌で足止めだ。雪がすごい。明日事務所に寄るつもりだったが、直接大阪に行く。そっちはどうだ? 忘年会の準備は大丈夫か?」
「あ……はい、忘年会の方はご心配なく」
「あとを頼む」
「はい、あの……」
 言いかけた言葉は工藤には届かなかったようだ。
 何日か前の夜中に言葉を交わして以来、すれ違いで顔も合わせていない。
 今日は戻ることになっていたが、急な寒波が降りてくると予報で言っていたのが当たったらしい。
「暖冬じゃなかったのかよっ!」
 思わず何かに当り散らしたくなった良太を下柳が振り返った。
「どした?」
「あ、いや、何でも」
 良太は慌ててごまかした。
「疲れてんな、良太ちゃん。今夜は適当に切り上げて飲みに行くか?」
「え……いや……」
「賛成!」
「ぱあっと盛り上がりましょう!」
 良太が返事をする前に、他のスタッフがもうその気になっている。
 どちらかというと、早めに上がってためている自分の仕事をしたかった良太は苦笑いとともにため息をついた。

 


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