ほんの少し届かない23

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「肇、お前、何かやつれてないか?」
 ズズッとコーヒーをすすり、良太は隣の肇に顔を向けた。
「まな、今月は毎日終電まで残業でさ」
 忙しいのは青山プロダクションだけではないということだ。
「で? どうしたんだよ」
 肇はしかし良太と目を合わせようとせず、言いにくそうにハンバーガーをほおばる。
「何かやらかしたのか? 俺にできることがあったら言えよ?」
 心配そうに言う良太に、肇は声も出さずうなずきながら、たちまちのうちにハンバーガーを食べ終えて、喉につかえそうになり、慌ててコーヒーで飲み下した。
「バッカ、いくらなんでも、んな慌てなくてもいいだろ?」
「……おう……」
 コーヒーまで飲み干して、肇はふううと大きく息をついた。
「お前にあやまらなけりゃならないことがある」
「はあ?」
 良太はもったいぶって切り出した肇を怪訝そうに見やった。
「すまん!」
 いきなりカウンターに頭をつけんばかりに言われても良太にはさっぱり何のことかわからない。
「あのな、肇、俺お前に何もされた覚えはないけど………」
「かおりのことだ」
「かおりがどうかしたのか?」
「実は」
 意を決したように肇が続けた。
「かおりとつきあってる」
「へ………」
 それはちょっと意外だった。
「お前に早いとこ言わなけりゃと思ってたんだが、つい言いそびれて」
「なんだよ、おい、だからって何で俺に謝る必要があるんだよ。俺とかおりがつきあってたのは高校ン時だぜ? いつからだよ」
 むしろどうやらかおりを好きらしい肇にハッパをかけようかと思っていたくらいだ。

 


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