ほんの少し届かない38

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「ええ、まあ、大晦日に行ければいいかな、と」
 母親に納会が済んだら行けると思うとは言ってあったが、ちょっと訂正しなければならない。
 三日には『パワスポ』の特番があるから、熱海にいられるのは正味二日くらいのものだろう。
「『パワスポ』は順調か?」
「はい、まあ」
「何だ、その、まあってのは」
「いえ、二十三日の沢村出演も本人OKもらってるし、年明けの特番も沢村一つ返事で出るって言ってて番組は別に問題はないんですけど」
 良太は躊躇しながら続ける。
「大山さんがまたねちねちと言うんで。MLBって騒いでたのに、こないだ契約更改一発サインしたとか、何とか。沢村はああ見えていい加減な男じゃないし、あいつの言ってたプロジェクトもとっくに動き出してるし、三冠王取れば、球団だってそうそう簡単に放さないわけで。とにかく、何かって言うと大山さん、絡んでくるから」
 つい愚痴ってしまう良太に、工藤は「捨てておけ」と言う。
「仕事に支障をきたさない限りな」
「はあ」
 不機嫌そうな工藤の顔をバックミラーで見ながら、良太は返事をする。
「大和屋の方はどうだ?」
「そっちも順調です。ローカルながらCM評判いいし、年明けの着物ショーもタレントやモデルさん以外の著名人の出演OK貰いましたし、それに佐々木さんですよ、忙しいのに茶の湯のご協力承諾してくださって、陽成院流の佐々木先生一門にもバックアップしてもらえることになったので」
「そうか」
 と、工藤の携帯に小杉から電話が入った。
「ああ、そうか、顔を出せるようなら来るように言っておけ」
 工藤が小杉と話している間に、車は東洋商事ビルに着いた。
 良太は、地下のパーキングに車を入れ、菓子を持って工藤と一緒にエレベーターで一階の受付に上がる。

 


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