ほんの少し届かない46

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「俺、連れてきます」
 良太がドアを開けると、すぐ沢村はやってきた。
「雨でさ、冷てぇのなんの。せっかくのイブも台無しって感じ」
 濡れたコートを脱ぎながら、沢村が言った。
「お友達って沢村選手だったの? あ、そっか、『パワスポ』で」
 現れた沢村が関西タイガースの沢村とわかり、藤堂はまた大仰に声を上げる。
「逆ですよ、お友達だったので、『パワスポ』なんです」
 笑って訂正した沢村は抱えていた包みを藤堂に差し出した。
「『越の寒梅』と『酒盗人』です。ロードに行くたびに、好きなんで買うんですよ」
「いろいろともらっちゃって嬉しいなあ、『サンタ、感激!』なんちって」
 藤堂はおそらく若者にはわからないだろう愚にもつかぬことをハイテンションで口にする。
「何モノ? あいつ、一人受けで」
 こそっと沢村が良太に耳打ちした。
「あれは仮の姿。実はキレモノのスーパーマンなんだ」
「はあ?」
 そのようすを見ていた浩輔が苦笑いを浮かべ、沢村のコートを受け取って、クローゼットにかける。
「あら、沢村くんじゃない」
 ひとみが目ざとく声をかけた。
「どうも、ひとみさん、おや、ヤギさんじゃないすか」
「おう、沢村、先にやってるぞ」
「なんすか、それ、焼酎?」
 沢村は早速、下柳と同じものをもらってちょうど佐々木と直子が座るソファの向かいに陣取った。
 なんだかな、と良太はワインをもらい、沢村の隣に腰をおろした。
「そういや、かおりちゃん、今頃白馬だよな」
「え、何で知ってんだよ」
 年明けの大和屋のイベントに出場することになっている沢村を佐々木たちに紹介しようと思っていた良太だが、驚いて沢村を振り返る。

 


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