ほんの少し届かない47

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「かおりちゃんから、こないだ、肇とつき合うことになったから、良太のことよろしくって」
「はああ? 何だよ、俺のことよろしくってのは」
「沢村くんなら許してもいいって、お墨付きが出たぞ」
「だから、何だよ、それ~、お前何言ったんだよ、かおりちゃんに」
「まあまあ」
 焼酎を口にしながら沢村はニヤニヤ笑う。
「正月の特番、しっかり頼むぜ、お前次第で視聴率左右するんだからな」
「まかせとけって」
「佐々木ぃ、久しぶりじゃん。独立したって?」
 ガールフレンドと一緒にきていたロックヴォーカリストのキョウヤが一杯機嫌で焼酎を片手にやってきて、佐々木の隣に座ったので、また佐々木に沢村を紹介しそこねた。
「どうぞ、沢村くんからいただいた『酒盗人』です」
 やがて藤堂が皿と箸を携えてテーブルに置いた。
 マイセンに盛りつけられた『酒盗人』というのもあまり眼にすることはないだろう。
 『越の寒梅』も栓が抜かれ、キョウヤと話していた佐々木や直子も藤堂の方へ向かうのに続いて沢村も立ち上がった。
 場は一気にオヤジたちの酒盛りの様相を呈してくる。
 イブの夜は深夜に近づいて一層賑やかになった。
 藤堂がひとみの持ってきたヴィンテージ物のワインをそろそろ開けようかという頃、ドアフォンのランプが赤くなった。
「はい、須永さん? どうぞ」
 マネージャーの須永ともう一人くるからと、さっきひとみに言われていた藤堂は、愛想よくセキュリティを解除する。
 リビングの大時計があと数分で午前零時を告げようとしていた。
「わあ、雪」
 直子が立ち上がった。
「ウソ」
 リビングいっぱいに広がる大きな窓から見える夜景にふわふわと雪が落ちていく。
 部屋の中が柔らかいキャンドルライトだけなので、雪の白さを際立たせている。
「工藤さんじゃないですか」
 ぼんやり雪に見とれていた良太は、えっと振り返る。

 


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