ほんの少し届かない6

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 でも、やっぱちょっとでも工藤の手助けしたいよな……
 やることはいろいろあるのだが、まだまだ工藤の片腕というには程遠い。
 それが良太には歯がゆいばかりだ。
 工藤のために何でもやりたいという、ただそれだけのことである。
 工藤と自分との関係をどう説明していいかわからないが、少なくとも良太としては散々文句を並べつつも、浮き名の絶えない鬼社長に身も心も捧げまくってます、なのだからどうしようもない。
 良太の心のベクトルは工藤へ一直線なのだ。
「おー、ナータン、ただいまぁ~」
 八時を過ぎた頃、オフィスを閉め、コンビニで弁当を買って会社の七階にある自分の部屋に戻った。
 懐こい甘えん坊の猫は早速、会いたかった、とばかりに良太のズボンにスリスリ。
 ひょいと抱き上げるとナータンは良太の肩に止まって運ばれる。
 まず先にナータンのご飯を用意して、寝巻き代わりのスウェットに着替えると、湯を沸かしてテレビをつける。
 比較的早く帰れた時のパターンだ。
 弁当とインスタントの味噌汁にお茶を炬燵の上に並べ、足を突っ込んで食べ始めると、ナータンがすうっと膝の上に上がって落ち着いた。
 何かあったときのためにと会社の電話を自分の電話に転送しているが、今夜は緊急の電話もないし、静かなものだ。
 と思っていたら、電話が鳴った。
「はい、青山プロダクション!………ああ、かあさん、どしたの?」
 慌てて受話器を取ると、相手は待ち人ではなく、熱海にいる母親からだった。
「ん、どうもしないけど、どうしてるかと思って。そろそろ風邪引く季節でしょう?」
「風邪引く季節って、俺だって気をつけてるよ。母さんたちこそ、気をつけてよ」
「だって、良太はいつも扁桃腺腫らして熱があるのに、野球行って、倒れて監督さんに運ばれて……」
「また、その話か、もう大人なんだし、そんなバカやんないって」
 そうは言いつつも、はたと会社に入って既に何度か倒れて病院に運び込まれていることを思い出した。

 


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