寒に入り7

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 すかさず、小笠原は唐揚げを追加オーダーする。
「ちぇ、どうせ、経費だからと思ってるな」
「細かいこと気にすると、小田さんみたくなるぞ」
 ジョッキを持つ良太の手が止まる。
 小田は工藤の大学の同期で、青山プロダクションの顧問弁護士でもあるが、日頃から工藤のお陰で額が後退したと文句を言い合う仲である。
「やめてくれ………」
「で? 工藤ファミリーが集うのはどのホテルだ?」
「その言い方やめろ。ホンモノっぽ過ぎる」
 良太は都内のハイグレードホテルの名前を言った。
「おお、そりゃまたゴージャス!」
「ほんとはハワイとかグアムとか行けたらよかったんだけどってやつだから」
「いんじゃね? きっとみんな喜ぶさ」
「ま、な。うちなんか一家して大喜びでさ」
 ただ、宇都宮には会えるのかなどと聞いてきた妹の亜弓のことが気になるのだが。
 無論、会社の慰安旅行替わりだから宇都宮は関係ないとは言ったものの、上京したら宇都宮に逢いたいとか何とか良太に注文をつけている。
 それを口にすると「ドラマの撮影見学とかくらいさせてやればいいじゃん」と小笠原は事も無げに言う。
「せっかく業界にどっぷりつかってるんだからさ」
「やめてくれ………俺の人生どこで狂ったんだろ」
「今さら何言っちゃって」
 ケラケラと笑いながら小笠原はビールを飲み干した。
 いやほんと。
 何で俺、人気俳優と普通に飲みとかしてんだろ。
 最近、業界人以外とは顔を合わせていない気がする。
 かおりや肇とはラインでおめでとうメッセージを送り合ったくらいで。
 ふと、小笠原も飲む友達がいないとか言っているし、同じく社の看板俳優陣である志村嘉人や意外にも中川アスカもあまり腹を割って話せる友人がいないとか。
 志村はマネージャーの小杉とは劇団時代からの付き合いだからいいとしても。
 やはり大人になると、そう簡単に心を許せるような友人を作るなど、結構難しいのだろうか。
 そういえばあの横柄スラッガーも、年末にかおりらと飲んだ時、披露宴に呼ばれたことがないから、是非呼んでくれなどとほざいていた。
 まあ、俺に何でも相談室をやらせるくらいだから、本音が言い合えるような相手というのはやはりいないんだろう。

 


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