風そよぐ126

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 案の定、相談があると言われて、千雪は席を立って外に出た。
「はあ? なんでまた俺が当て馬みたいなこと……流とかいてるやろ」
 聞けば、本谷が好きになっている相手をあきらめさせるために、その相手の恋人をにおわせてほしいという。
「別に恋人役になってとか言ってないじゃない。におわせるだけでいいのよ。それに流は撮影終わったらすぐにかえっちゃうし、あいつがそんなことに協力してくれるわけないじゃない」
「はあ。それで、誰の恋人やて?」
「工藤さん」
「はあああ?」
 アスカから工藤と良太がぎくしゃくしていて、良太が引っ越しまで考えていることなどを聞くと、了解せざるを得なかったのだ。
 その日のうちに良太のところへ出向いて週末に法事があるからなどともっともな理由でもったいつけた上で、撮影に顔を出すことを告げた。
 素の千雪じゃないと、本谷が納得しないというアスカの強い希望で、千雪はこうしてドラマの打ち上げの席に現れたわけである。
「ドラマ、少しは慣れました? さっき撮影見せてもろたけど」
 千雪は隣の本谷に尋ねた。
「あ、はい、あの………、失礼ですけど、これからこのドラマに出演されるんですか?」
 突然現れた正体不明の男に声をかけられて当然戸惑っている本谷が、千雪は少し可哀そうになった。
「やだ、本谷くん、小林先生よ、原作者の」
 アスカの言葉に、本谷は言葉を失ったように目を白黒させてアスカと、千雪を交互に見た。
「ああでも、これは部外秘だから」
 アスカは唇に指をあてて付け加えた。
 人間の顔の中で目と言うのはそれこそ口ほどにものをいうというくらい、人となりを顕してしまうものだ。

 


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