風そよぐ4

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「いやあ、ほんと、次はスムースにいってほしいっすよ。何せ、今かかわってるドラマがまた問題山積みで」
 なるべく思い出さないようにはしていたが、こちらはある意味、『花の終わり』を凌駕するほど前途多難なこと間違いなく、良太はまた頭の上にどっかと重い石がのっかっ多様な思いにふう、とため息をついた。
「あ、『田園』やろ? 内容は置いといても、ええ文章書かはる作家さんやな」
「原作はね、牧歌的でノスタルジックで、北海道の広い大地を思わせる背景描写がいいんですけどね」
「またキャスティングに難ありなわけか。せえけど、主役の宇都宮俊治ってよさげな風なひとやないのか?」
「宇都宮さんはね、まったく問題ないんですよ。ってか、むしろ、ほかのキャストのああだこうだをまとめる俺の味方になってくれるくらいで」
「そんなにキャスト、問題ありなんか? まあ、ドラマを見てる限りでは何もわかれへんもんな、制作側の内情なんて。まあ、工藤さんもおらんくて、一人で悶々とするようやったら、いつでも俺呼び出してええで? やけ酒くらい付き合うし」
 千雪は思い切り良太に同情して言った。
「はあ、ありがとうございます」
 とはいえ、いざ千雪を頼って呼び出したところが、あの、面倒な京助がくっついてくるのは間違いなさそうだ。
 ちょっと、それは勘弁……。
「けど、ほんと、千雪さんも、よくあの横暴な京助さんと付き合ってられますよね」
「それこそ長年の腐れ縁いうやつやろ? まあ、横暴いうたら京助の専売特許みたいなふうに思われてるけど、俺もええ加減横暴やからなあ」
 しみじみという千雪に、「ああ、それもそうですね」と良太は頷いた。
「おい、そこは、ちょっとでも否定するとこちゃう?」
 えへ、まあまあ、と良太は苦笑いを返す。
「少しは元気になったみたいね、お二人とも」
 鈴木さんがお茶のおかわりを二人の湯飲みに注ぎ、弁当の殻をまとめて台所に向かった。
「工藤さん、最近も海外とか?」
 熱い茶を少し冷まして口に持って行った千雪が思い出したように聞いた。
 途端、昨日の夜中、やっと部屋に帰ってきて疲労困憊の良太の都合も何のそので自分の都合だけで良太を強襲してくれた男の顔が瞼に浮かび、良太はちょっと身体の火照りを思い出しかけて懸命にそれを思考の外に押しやろうと眉をひそめた。
 まったくあのくそオヤジときた日には。
 お陰で良太の疲労困憊はいや増さざるを得なかったのだ。

 


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