限りなく傲慢なキス 1

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  ACT 1

 少し寝過ごしたようだ。
 工藤は枕もとのサイドテーブルに置かれた目覚まし時計で時刻を確認しながら、身体を起こした。
 まだ薄暗さが残る六時過ぎ、今朝もかなり冷え込んでいる。
 傍らで無防備に眠る良太はまだぐっすり夢の中らしい。
 真夜中に強襲してついつい疲れさせてしまった。
 ここのところ一気に良太の仕事量を増や増やすことになった後ろめたさもあり、こんな時間にたたき起こすのも可哀想な気がする。
 良太が入社して四年になるが、男というにはあどけない寝顔に工藤は笑みを禁じえない。
 いつまでたっても工藤からすればガキだ。
 怒鳴りつけるのが性分の俺に、ビビりながらもよくくらいついてきたものだ。
 いや、最近は軽く受け流すようになった。
 クソ生意気に。
 工藤はベッドを降りて椅子に引っ掛けておいたシャツとズボンをつけ、上着とコートを掴むともう一度良太を振り返り、こめかみにキスを落としてドアへ向かう。
 壁際の猫用ベッドで寄り添うように眠っている二匹の猫のうち先輩格の方が、ピクリと耳を動かした。
 フライトまであと数時間。
 起きる気配のない良太に幾らか未練を残しながら、工藤は良太の部屋を出た。
 


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