翌日は快晴の空の下、アウトストラーダを二人で交替にレンタカーを運転しながら走った。
「すんげー気持ちいい!」
飛び行く景色もよかった。
三時間もかからずに着いたフィレンツェで、また一時間以上も並んだけれど、初めて入ったウフィッツィ美術館では、良太が、すげー、を連発して、工藤を苦笑させた。
ボッティチェルリの春の前では小首を傾げて感慨にふけっている。
「何だ、そんなに感激したのか」
「え、はあ、すんげくきれいなんだけど…。何か、淋しい絵だなと思って」
「ハ…、お前にそんなことを考えてもらえれば、ボッティチェルリも本望だろうよ」
「えー? 何ですか、それー」
パラッツォ・ヴェッキオではまた知り合いがいる、という工藤に良太はつい構えたが、今度は髭面の男だった。
これまた工藤だけでなく良太も両手を広げて抱きしめて大いに歓待し、中を案内してくれた。
「リッカルドはここの課長だ。以前、番組で撮影させてもらった時世話になったんだ」
「へえ、ここの課長さん?」
「ここは庁舎としてまだ使われてるからな。普通観光客は入れない部屋もある」
リッカルドはそういう部屋にも案内してくれた。
「何か…」
「どうした」
「不思議な気がして。レオナルドとか、歩いたかもしれないここを、今、俺が工藤さんと歩いてるってことが」
真剣に言い出す良太が可愛い、などと思ってしまう自分を、工藤は笑う。
「まーた、笑ってるし」
リッカルドにおすすめのレストランに案内してもらい、三人でトスカナ料理を堪能したあと、フィエゾレに車で足をのばした。
「ぜっけ―――――!」