花びらながれ13

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 ことあるごとに資産家の御曹司のように言われるが、沢村自身は実家とは折り合いが悪く縁を切っている、というのも良太は再三聞いている。
「それが不動産屋から佐々木さんにそのことがバレて、以来、携帯も切られた」
「ってか何で、そもそも佐々木さんに内緒でやったんだよ?」
 良太はじろっと沢村を睨む。
「んなもん、話したら絶対反対するに決まってるからだ、佐々木さん」
「じゃあ、佐々木さんが反対するのわかっててやったお前が悪いんだろ」
 そう言ってから、かなりしょげているようすの沢村が少しばかりかわいそうになり、良太は聞いてみた。
「でも、佐々木さん、何でお前が土地を買うことに反対なわけ?」
 沢村は少し間を置いて、重い口を開いた。
「多分、俺がさ、もしそこに家でも建てようものなら、半永久的に佐々木さんと離れないって宣言することだろ? けど、佐々木さんは俺との関係をそこまでもたせようとは考えていない。どころか、そのうちに清算するつもりもあるんじゃないかと思ってる」
 確かに、もし家を建ててから二人が別れたら、また面倒なことになるだろう。
「俺はさ、佐々木さんと、この先ずっと離れたくないって思ってるからな」
 それは沢村の本音なんだろう。
 良太は沢村の思いも佐々木の思いも何となくわかる気がした。
 未来永劫なんてあるかどうかわからない。
 自分だって、この先工藤とどうなるかなんて、皆目見当もつかないのだ。
 二人は珍しく真面目に、そんなことを話していたが、いつの間にか時間は真夜中を過ぎていた。
 唐突にオフィスのドアが開いて、二人は少し驚いて顔を上げた。
「真夜中まで一体何をやっているんだ?」
 良太はデスク、沢村はソファに座っている二人から、何か深刻な話をしているらしいことは工藤もすぐにわかった。
「どうも、じゃ、俺、帰るわ」
「おう」
 沢村は工藤に、どうも、と言っただけで、うらぶれた背中を向けてオフィスを出て行った。
「一体どうしたんだ、あいつは。幽霊みたいな顔で、野球なんかできるのか」
「はあ、それが、また、色々と……」
 良太も沢村の思いが伝染したように、何となく覇気がない。
「えっと、例のドラマのキャスティングの件ですが、アスカさんと奈々ちゃんにスケジュール調整してもらって出演OKもらったので、坂口さんにその旨報告しました。それから……」
 ぎこちなく良太は工藤に留守中のことを報告する。
 水野あきらに番組の音楽制作を快諾してもらったこと、そして有吉のことも話し、まだ警察から返してもらえないが、小田弁護士に依頼したことも付け加えた。
「でも有吉さん、おそらくはめられたんじゃないかと……」
 ついうっかり口にして良太は心の中でしまったと思う。
「お前、何か知っているのか?」
 すかさず工藤に突っ込まれる。

 


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