鬼の夏休み12

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 標高の高いこの街の朝は窓越しの風だけで十分に涼しい。
 良太はむき出しの肩が寒くなって、目を閉じたまま上掛けを引っ張り上げた。
 気だるい身体は重くて起き上がりたくもなかったが、それでも厚ぼったいカーテンの隙間から洩れる朝の光を感じてうっすらと目を開けた。
 この屋敷の家具調度は古く、今は都会とは隔絶された空間にいるのだと教えてくれる。
 もう怠惰にずっとベッドの中でうだうだしたいと、良太はまた目を閉じた。
 だが、顔をあたりさっぱりとした様子でバスルームから出てきた工藤が、「メシができてるぞ」と言ったのが聞こえて、良太はベッドの上に起き上った。
「やっぱ杉田さんがもう来てる?」
「早々と電話で叩き起こされた」
 良太は電話の音にも気づかず熟睡していたらしい。
「まだ寝ててもいいぞ。メシは取っておいてもらえば」
 ベッドサイドのテーブルに置かれた時計は九時を知らせている。
「………起きる…………」
 半分も覚醒していない脳みそのまま、良太は何とかベッドから這い出した。
 それから二十分もしないうちに、カラスの行水でシャワーをあびてスウェットを着込んだ良太は、階下のダイニングテーブルで、オムレツやベーコン、トマトやレタスのサラダをパクパクと口に運んでいた。
「ぼっちゃん、もういいんですか? トースト一枚残ってますよ」
 既に新聞を読み始めた工藤に、コーヒーをカップに注ぎながら杉田が言った。
 平造御用達の美味しいバターを塗ったトーストは二枚ずつ用意されていたが、ミネストローネスープとともにとっくに良太は腹の中に収めていた。
「そこの幼稚園児と大差ないぼっちゃんと違って、こっちはもうぼっちゃんとか呼ばれるような年でもないんでね、もう充分頂いた」
 それを聞いていた良太はほんのちょっと吹き出して、上目遣いに向かいに座る工藤を見た。

 


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