鬼の夏休み13

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 相変わらず工藤は、杉田の、ぼっちゃん呼ばわりに抵抗したいらしい。
「すみませんね、もうクセですから、ぼっちゃんはぼっちゃんです」
 まあ、確かに、子供の頃から面倒を見ていた相手なら、大人になっても四十を越えてもぼっちゃんはぼっちゃんなのだろう。
 ドラマ「からくれないに」の原作者である推理小説家の小林千雪が、彼の従姉で現在東洋商事CEOの綾小路紫紀の夫人である小夜子に、いつまでも千雪ちゃん呼ばわりをされるとぶーたれていたが、子供の頃から知っていれば今更な話のようだ。
 でもやっぱ、何で小夜子さん、俺まで、良太ちゃん、なんだ?
 良太は以前にも同じ疑問を抱いたのだが、業界でよくちゃんづけで呼ばれたりするのとは、どこか違う気がするのだ。
 たまにこの別荘に青山プロダクションの社員やタレントが遊びに来た時にも杉田が手伝いで来てくれたりするので、杉田にはとっくに、良太ちゃん呼ばわりされているが。
 杉田は工藤と自分の関係をどう思っているのだろうと、良太は心配になったこともあったのだが、何のわだかまりもなく、優しく接してくれる。
 平造に何か聞いているのだろうかとも思うのだが、そこはいろんな人間に関わってきただろう家政婦のプロ、というやつなのかも知れない。
 いや、工藤ならこれまでにもあり、ってことなのか?
「綾小路さんとこには何時に行くんですか?」
 それを聞いていなかったと、良太は思い出した。
「ああ、今夜BBQパーティってことだから、六時くらいに行けばいいだろう」
「じゃあ、何か持っていかないとですよね? 東京出る前に何か見繕っておけばよかった」
 コーヒーを持って来てくれた杉田さんに、すみません、と言いつつ、良太は考え込んだ。
「ブブクリコかモエか、適当なワインを二、三本見繕って持っていけばいいだろう」
「何か社交辞令的」
「社交辞令だろうが」
 事も無げに言う工藤に、良太はちょっと抗議したくなる。
 千雪さんとか、付き合い長いんだから、もうちょい考えたっていいだろうが。
 そんなことを考えた時、あっと思い当たる。
「ひょっとして、千雪さんとか来るから、きらいなパーティとかも行こうって思ったんだろ?」
 ついうっかり、杉田の前だというのに、良太は口にしてからしまったと思ったがもう遅い。

 


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