鬼の夏休み14

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 そんな良太のヤキモチなどお見通しとばかりに、フンと工藤は鼻で笑う。
 なんだよ、タレントが風邪でスケジュール狂わせたとか怒ってたくせに、時間が空いたのならちょうどこっちに来られるとか思ったんだ、と工藤にムカついた良太はコーヒーをかぶりと飲んで、あちっ、と慌ててカップから口を離す。
「あらあら、良太ちゃん、火傷しちゃったの? 大丈夫? 少し冷ましてから飲まないと」
 杉田が心配顔で良太を見た。
「あ、大丈夫っす」
 ひりひりするのが少し落ち着いてくると、良太はミルクを入れて飲み直した。
「散歩がてら俺、車とってきましょうか?」
 食事を終えて、しばし杉田さんとテレビのワイドショーをぼんやり見ていた良太は、カンパネッラに置いてきた車のことを思い出した。
「そうだな、腹ごなしに俺も散歩でもするか」
 新聞を畳みながら立ち上がった工藤は、白い七分丈シャツにブラックデニムを履いている。
 良太が時々、クソ、と思うのは、良太がこのアイテムを選ぶとシャツが浮いて見えるし、ガタイの大きさもあるが胸板の厚い鍛えた中身の工藤なら着こなせるという事実だ。
「ちょ、待って、着替えてきます」
 良太は二階にあがって、Tシャツとデニムにパパっと着替えて降りてきた。
 工藤が散歩とか珍しい。
 そっか、今日は例のタレントが風邪引いたおかげで工藤にとっては予期せぬ休日になったわけなんだ。
 歩いてカンパネッラに向かうと、レストランはまだ開店前だったが、吉川が外を掃除していた。
「おはようございます」
 吉川の方から二人を見つけて声をかけてきた。
「おはようございます。車、ありがとうございます」
「いつでもどうぞ。うち、駐車場は広いんで」
 掃除用具を片付けながら、吉川は良太に笑った。
 確かに、店の隣の駐車場は十台ほど置けるようになっている。
 平造の話によると、もともと親の土地で前は空き地だったところを、息子の吉川が借りたということだった。
 吉川の家も近所にあるが、この店を建てるにあたって二階に自分の部屋も作ったらしく、カンパネッラは吉川の住居兼店舗である。

 


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