鬼の夏休み15

back  next  top  Novels


 工藤が車を出す時、店の前の吉川がちょっと頭を下げた。
「カメヤ行けばいいっすよね、カメヤなら何でもあるし」
 助手席に陣取った良太は、そうだ、と思いついた。
 スキー合宿で軽井沢に来た時に京助らと一緒に良太も買い出しに行った大型スーパーだ。
 何でもありなので、以来たまに出向いている。
 高級食材から生鮮食料品まで豊富に揃い、地元民も使うが、どちらかというと別荘族御用達といったほうがいいだろう。
「大型スーパーに行くのにワクワクするとか、幼稚園児くらいだと思ったが」
 アクセルを踏む工藤がボソリと言う。
「大人でも楽しいもんは楽しいんです!」
 大人、を強調して良太は抗議したが、確かに子供の頃は母親と一緒に大きめのスーパーに行ったりすると、テンションが上がって走り回ってしまうような子供だった。
 けっ、どうせ中身は変わってませんよ。
 スーパーカメヤはとにかくスーパーというより商業モールのような感じで、イートインできるカフェも入っていれば、ペットのトリミングの専門店も敷地内にある。
 酒の品ぞろえも超がつく高級品が棚に置いてあるし、デリカテッセンやベーカリーに並ぶパンが見るからに美味そうだ。
 もちろんパティシェリーも入っており、そこのプリンが美味しいとプラグインの藤堂が言ってたのを思い出した。
 カートを押しながらまず酒を物色している工藤が、ふと良太には新鮮に映った。
 工藤と一緒に買い物、しかもスーパーを歩くというのは初めてだ。
 しかめっ面でワインを選んでいる工藤の横で、ハムやチーズの並ぶケースを覗き込んで、良太はゴルゴンゾーラやモッツァレラチーズ、生ハムなどをいくつかかごに入れた。
 工藤が選んだワインはテタンジェ二本とブーヴクリコを三本、カートに入れた。
「美味しいプリンがあるんですよ」
 酒のコーナーを出ると、良太はそう言ってパティシェリを目指してカートを押した。
 工藤は仏頂面で後についてくる。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村