鬼の夏休み16

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 パティシェリ・ブランはプリンやチーズケーキが有名で、多くのセレブ御用達らしい。
 プリンとチーズケーキを十個ずつと杉田用にも三個ずつ買った。
「そんなに買って誰が食うんだ?」
 見るからに嫌そうな顔で、工藤が聞いた。
「お子さんもいるし、お子さんじゃなくてもみんな好きですよ、きっと。あ、こっちは杉田さんに」
 どうせ支払いは工藤なので、良太は遠慮なく買った。
 見ると、ワインも三本とあと一本ずつ分けて袋に入れてもらっている。
「杉田さんに一本、急に頼んだからな」
 出口に向かいながら言い訳のように工藤は言った。
 駐車場で車のトランクにワインやプリンの袋を入れていると、「あ、良太やないか、と工藤さん」という声がして、振り返ると犬連れの小林千雪が立っていた。
「千雪さん、奇遇ですね」
 案の定だと良太は笑う。
「狭い街で、大抵行くとこ決まっとおるし、そう奇遇でもないわな」
「ですよね」
 世の中には著者近影などでもさもさ頭に黒縁メガネがトレードマークの推理小説家として知られているが、実はそれは世を忍ぶ仮の姿で、本人はこうやってデニムにネイビーのシャツをモデルのように着こなした美形だが、身近の人間しかそのことは知らない。
 美貌故に女子にも、男にまで追い回されたというトラウマから、千雪は東京に出たのを機に、近影のようないでたちで大学デビューしたという。
「今夜のパーティ、二人だけ?」
「ああ、はい、俺は急に言われたんでどういうパーティか知らないんですけど」
「どういうもただのBBQパーティ。綾小路では恒例みたいやけど、俺は虫とか寄ってくるんで、苦手やけど」
「当然、京助さんもいますよね」
「仕切るのはあいつやから」
 やっぱね。
 スキー合宿の時も京助が仕切って、スキーは扱くし、掃除、料理など参加者にやらせるし、まさに合宿そのものだったが、何よりみんなで買い出しに行ったり、あと片付けをしたりするのも楽しかった。

 


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