鬼の夏休み18

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 六時を少し回った頃、工藤と良太は綾小路家の別荘へ車で向かった。
「俺、飲みませんから、帰り、運転します」
「タクシー呼んでもいいんだぞ?」
「大丈夫ですよ」
 半年ぶりで訪れた綾小路の別荘は、夏だからか一層森の緑が深く、ぐるりと囲むレンガ塀に沿って進むとようやく大きな門が見えてくる。
「ったく、何でこんな無駄にバカでかいんだよ」
 前回も言ったような文句を口にしながら、良太が車を降りてインタフォンを鳴らすと、はい、どちら様でございますか? という慇懃な声が聞こえた。
「工藤と広瀬です」
「少々お待ちくださいませ」
 良太が助手席に戻るうちに門が開いたので、工藤は車を進めた。
 やがて賑やかな声が庭園のあたりから聞こえてきた。
 車寄せに停めて、二人が車から降りると、「工藤様、広瀬様、お待ちいたしておりました」と出迎えた初老の紳士が深々と頭を下げた。
 東京の綾小路家にいる藤原さんは、イギリスに留学して執事の仕事を学んできた本物のバトラーだと、良太は以前、京助の弟の涼から聞いたことがある。
 執事というのが最近ブームになったが、藤原さんのようなホンモノはなかなかいないらしい。
「今日はおせわになります」
「これ皆さんでどうぞ。こちらのお菓子は冷やして召し上がってください」
 良太が二つの紙袋を差し出すと、藤原さんは「お心遣いありがとうございます」と恭しく押し頂いて、後ろに控えていた青年がそれを受け取った。
「公一さん、お久しぶりです。今夜は何か違いますね」
「そうなんすよ、明日のパーティの予行演習?」
 お仕着せに身を包んだ公一は藤原の養子で、京助らと一緒に綾小路家で育った今時の若者だ。
 ちょっと不満げな顔で良太に肩を竦めて見せた。
「お車、駐車場に回しますから、キーをお借りしてよろしいですか?」
 軽口のあと、公一にしては丁寧な言葉で工藤に尋ねた。

 


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