鬼の夏休み19

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「ご案内します」
 工藤が公一にキーを渡すと、藤原は二人をパーティ会場になっている庭園の方へと案内した。
 ざっと四、五十人はいるだろうか、皆ラフな装いだが、大概がセレブと称される人種がほとんどで、年齢層は比較的若めのようだ。
「工藤さん、良太ちゃん、よかったわ、来ていただけて」
 庭園の中心から目ざとく二人を見つけて歩み寄ってきたのは、綾小路小夜子だ。
 綾小路紫紀の妻で、日本橋の老舗呉服問屋大和屋の一人娘である小夜子は、大和屋の広報も担当しており、年頭のイベントを取り仕切ったのは彼女だ。
 ノースリーブのフレアーワンピースはシンプルだが、彼女が着ると華やかでゴージャスに見えるから不思議だ。
 ふわりとした可愛らしい雰囲気の女性だが、仕事はきっちりこなす、なかなか芯はしっかりしている。
 さらに千雪の従姉にあたり、よく似た美女である。
「お忙しいところありがとうございます」
 他の客と話していた紫紀も、小夜子の後ろからやってきた。
「工藤さんも良太ちゃんも、たまにはゆっくり楽しんで行ってください。今夜は肩がこらないパーティですから」
「ありがとうございます」
 工藤は紫紀に対してはいつも丁寧な対応をする。
 紫紀もまた、セレブにありがちな奢ったところもなく、どちらかというと飄々として、つかみどころがない。
 良太は紫紀には何度か会っているが、どうにも読めない。
 それだけ大物ということか、とは思うのだが。
 弟の京助は紫紀とは正反対で、行動にしろ言動にしろ、そのままの人間だからわかりやすい。
 表裏がないのは嫌いではないが、出会いからして横暴そのものだったため、未だに苦手だ。
「ドラマで随分、千雪ちゃんがお世話になったんでしょ? 何とかなったのは良太ちゃんのお陰だって、言ってたわ」
 小夜子はまた苦労のない言葉でにこやかに笑う。
「とんでもないです。こちらこそ、千雪さんのお陰でドラマができるわけですから」

 


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