鬼の夏休み2

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「これで一つ肩の荷が降りたっと」
 良太は思わず口にした。
 まあ、佐々木さんが手がけたんだから、しかも沢村使ってだし、いいものができないはずはないよな。
 というのも、佐々木と沢村は恋人同士なのだ。
 昨年の十一月から半年以上のつきあいだが、内輪の者しか知らないことではあるが。
 あまりに意外な組み合わせに、最初沢村から聞かされた時は驚いた良太だが、あとでわかったのは、どうやら二人を結び付けたのは良太だったらしいのだ。
 たまたま仕事でとあるホテルのラウンジで佐々木と会った良太は、その夜、たまたまリトルリーグからのライバルでもある沢村と飲みの約束をしていた、それが沢村が佐々木にフォーリンラブとなったきっかけだった。
 佐々木は、沢村が人気スラッガーであるということでかなり葛藤もあったらしいのだが、傍で見ている良太には、かなりラブラブに思える。
 もう、勝手にやってくれ、って感じだったもんな。
 七月に沢村の撮影のために大阪のスタジオに行った時も、二人の関係を知っていればあてられっぱなしだった。
 まあ、沢村があちこち遠征行くし、なかなか会えないから、余計だよな。
 あっちこっち飛び回っているといえば、うちの社長なんか沢村の上を行くからな。
 しかも行先、日本だけじゃないし。
 工藤高広。
 キー局であるMBC時代から鬼の工藤と異名を持つ敏腕プロデューサーとして名を馳せ、工藤が関われば必ず当たるし、起用した俳優もブレイクすると言われているが、実力のないものはスッパリ切り捨てる冷酷非情な男として業界では知られている。
 その工藤が、MBCをやめてから興したのがこの青山プロダクションである。
 映画、ドラマの制作を中心に、タレントの育成、マネジメントなどが主な業務内容で、業績はこの不景気なご時勢にあって右肩上がりだが、万年人手不足のため、社長の工藤と今やその懐刀となった良太は、寝ても覚めても仕事のループから抜け出せないでいる。
 人手不足の理由としては、主に広域暴力団中山組の組長の甥という工藤の出自にあり、社員募集の広告を出したところで、工藤がその事実を告げると大概、面接で踵を返す。

 


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