鬼の夏休み20

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 そこへトレーに飲み物を乗せて、長エプロンをしたバイトらしい女の子がやってきた。
 工藤がトレーシャンパンを取ると、「ノンアルってありますか?」と良太は聞いた。
「ただ今ご用意いたします」
 ポニーテールの女の子はそのままテントの下に俄かしつらえのカウンターバーへと戻っていった。
 長エプロンをした若い学生風の男女が数名、トレーを掲げて歩き回っていた。
 テントの横には、大きなバーベキューコンロが三台並び、それぞれ手際よく肉や野菜を焼いているのは、京助、弟の涼、それに紫紀の息子大だ。
 コンロのようすを見ながら、京助が焼きあがった食材を皿に取り分け、テントの中のバイトたちに持っていくように指示している。
 どうやらパーティの裏で仕切っているのはやはり京助のようだ。
「暑そう………」
 ひたすら食材を焼くことに専念している三人を見て、良太は思わず口にした。
「俺もてったおかて言うたんやけど」
 どこからか不意に現れた千雪が、ボソリと言った。
「お前はとろいからやめとけとか言いよって」
 良太は笑った。
「あら、だって、千雪ちゃん、お料理なんかできないでしょ?」
 小夜子にもはっきり言われている。
「カレーは作れるし」
「すごいじゃないですか」
 どや顔の千雪を見て良太はまたちょっと笑う。
「おちょくっとんな?」
「いや、俺もできませんもん。昔、何か作ろうと思ったことはありますけど、鍋やボールや散らかして妹にやらなくていいって怒られましたよ」
「フン、同類やん」
「喜ばないでください。料理と言えば、宇都宮さんもできるんですよ、てきぱきとアクアパッツァとか」
「へえ、てか、宇都宮さんとそない親しいん?」
「え、いや、ドラマの合間に、宇都宮さんちで鍋やったんです。ひとみさんとか須永さんとかと一緒に」
 広い部屋の真ん中で四人で鍋を囲んだことなど、良太はその時のようすを手短に話した。
 その横で工藤は紫紀と話し込んでいた。
 小夜子は誰かに呼ばれ、笑顔で話を聞いている。
 たまに聞こえてくる単語から、工藤と紫紀の話はどうやら新しいドラマのことだと良太にも分かった。
 やっぱね、工藤がパーティとか、何かあると思ったよ。

 


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