鬼の夏休み23

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 化けなくても夜じゃなくても美人でしかも男とか、しかも芸能人じゃないとか、そんな人間そうそういるわけはない。
「いや、いた、もう一人」
 良太は先月の大阪の撮影のことを思い出した。
「何がいたんや?」
「だから男で美人って」
「それって佐々木先生のことやろ? あの人は文句ない美人やな。しかも天然気質」
 千雪が言うか、と良太は笑うしかない。
「あの人、あんましわかってないやろ? 自分のことも周りも、興味ないもんは知らんみたいなアーティスト気質やから。少なくとも俺はもうガキの頃からわかっとるわ。美人やとかいわれつくしとおる。やから嫌いやってん自分が」
「はあ、それで大学デビューですか」
「まあな。しかし、今夜はまちごうたな。ジャージに黒縁メガネで来るとこやったわ」
「は?」
「こんだけわけありなセレブや俄かセレブが集っとるんや、何が起こるかわかれへんやろ? 名探偵がおらんと話にならん」
「ああ、はいはい」
 脱力した良太を見て、「おま、またそうゆう、人おちょくりよって」と千雪は眉を寄せて抗議する。
「別におちょくってなんか。俺は工藤さんについてきただけだし、美味い物食べられればいいんで、セレブとか、俺は関係ないし。あ、これウマぁ」
 齧りついた肉はさすがにうまい。
「あら、良太ちゃんじゃない! 久しぶり!」
 いきなり、声をかけられて良太が振り向くと、理香が立っていた。
 五所乃尾流華道家元の娘、五所乃尾理香、アメリカの富豪と結婚したが数年後に離婚、世界中を飛び回って、五所乃尾流の広報活動をしている、と言えば聞こえはいいが、一年の半分はセレブらと一緒に優雅なパーティ三昧で暮らしているらしい。
 黒いシックなドレスにサンダルを履いた理香はクールな美貌にシニカルな微笑を浮かべている。
「あ、どうも」
 良太は皿に置かれた串焼きの肉をとりあえず食べてからぺこりと頭を下げる。
「おんや、良太ちゃんじゃないか」
 理香の後ろから声をかけてきたのは京助の友人の速水だった。
「速水さん、お久しぶりです」
 この男は犯罪心理学者で、京助と同じT大で准教授をしている。
 実のところ良太はこの二人はあまり得意ではなかった。
 派手で遊び好きで、何より、千雪もあまり好きではないらしいことが、良太にもわかったからだ。

 


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