鬼の夏休み27

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 良太はちょっと声を落とす。
 そういえば、伯父が組長、とは工藤がよく言うが、祖母の話はしたことがない。
「きれいやったけど、えろ、勝気な人やったらしい」
 ちょうどその時、工藤と紫紀の話が終わったらしく、「良太」と工藤が呼んだ。
「あ、はい!」
 良太は千雪に、あとで聞かせてください、と言いおくと、工藤のところに行った。
「俺はそろそろ帰るが、お前はまだいたければいいぞ? タクシーで帰るし」
「あ、いや、じゃあ、俺も帰ります」
 時間はあっという間に過ぎて、九時になろうとしていた。
「千雪さん、俺、帰りますけど、また話聞かせてください」
 良太は帰りがけ、千雪にこそっと言った。
「ええよ。明日はまた来るんやろ?」
 すると良太は眉を顰めた。
「まあ」
「ほな、服、買いに出た時でもどっかでお茶しよか」
「服、ですか……」
 はあ、とため息をついて、良太は「じゃあ、ラインします」と言った。
「あ、そうだ、さっきプリンとかお渡ししたんで食べてくださいね」
 別れ際、良太は千雪に伝えると、駐車場から車を回してくれた公一からキーを受け取って運転席に乗り込んだ。
 工藤が助手席に座ると、良太はそろそろとアクセルを踏む。
 藤原と公一が頭を下げて見送るのをバックミラーで見やりつつ、良太の運転するベンツは綾小路の別荘を後にした。
「今夜が若めのセレブとかセレブもどきとすると、明日の晩はもっと重々しい連中が来るんですよね?」
「だろうな」
「やっぱ俺も?」
 良太は一縷の望みをもって確認のために聞いた。
「苦手なものを克服するのが大人だろ」
 しれっと言う工藤に、「ちぇ、自分こそすぐ逃げだす癖に」とモソモソ良太は口にする。
「何だ?」
「いえ、別に」
 やっぱ俺も行くのか……。

 


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