鬼の夏休み29

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 良太は何もかもが済んでから父親から連絡をもらって、それこそ青天の霹靂だった。
 ただし、債権者しかもたちの悪い連中にいつの間にか債権が譲渡され、ガラの悪い連中が良太のアパートに押し掛けたのは、中野弁護士の誤算だったようだ。
 中野から直接良太にも連絡がきたが、何か手立てを考えるからしばらく我慢してほしいという話だった。
 しばらくは結構長くて、良太が青山プロダクションに入社し、工藤が直接現金でチャラにするまで、良太はこそこそとアパートに帰っていた。
 ナータンはアパートの部屋で一人怖い思いをしていたに違いないと思うと、不憫さに目がウルついてくるのだが。
 そういえば、中野弁護士ってまだあんなことやっているんだろうか。
 ろくに礼も言ってなかったことを思い出し、どこかで時間ができたら一度訪ねてみようと良太は改めて思う。
「お前は行かなくてよかったのか?」
「まあ、俺は時間ができたらまたでいいんです」
 工藤が気にかけてくれるのはありがたいが、熱海に行く時間があったら仕事を進めたいというのが良太の本音だ。
 今回の軽井沢も、工藤だからついてきたんで、でなければ来てはいない。
「そういえば、工藤さんはいいんですか? お墓参りとか」
 少なくとも良太は、工藤が墓参りに行くとか聞いたことはない。
「平造が代わりに行ってくれてるからな。それこそ横浜にある寺だから、時間が空かないと無理だろう」
 軽井沢は来られても横浜は行けないのかよ、とは良太の心の声だが、工藤と一緒にこうして軽井沢に来られて喜んでいるのは良太自身なのだ。
 工藤の場合、墓参りを敬遠しているらしいのは時間の問題ではなく、心理的なものが大きいような気がした。
 曾祖母の話はしてくれるから、わだかまりもさほどないのだろうし、優しかったのだろうことは推察できる。
 だが墓参りとなると、曾祖父母だけでなく、おそらくそこには母親の名前もあるはずで、工藤が生まれて割とすぐに自殺したという事実は工藤にはきついはずだ。
 しかも母親の場合とは状況が全く違うが、恋人のちゆきまでもが自死し、さらにこれも工藤には何の責任もないと思われるのだが、かつて事務所の策略で工藤に近づき、工藤に捨てられたと思い込んで心を壊された駆け出しの女優村田ゆかりが自死したという、そこまでくると呪われてるくらい考えてしまいそうだ。

 


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