鬼の夏休み30

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 だが、村田ゆかりの事務所というのが、いつぞやクリエイターの佐々木を拉致監禁などという不埒な真似をしでかした傍若無人な俳優植山一馬が所属するサミットであり、まだ駆け出しで業界では右も左もわからないような村田を工藤に取り入らせるためにけしかけたのは、社長の平麻都香だったことも、とっくに業界の消息筋から無論工藤の耳にも入っていた。
 村田のことは、良太にも満更関係なくもない話で、村田の父親が工藤を逆恨みして脅しをかけ、殺害を企てていたのだが、それを察知した良太が村田を止めようとしてナイフで刺されるという事態となった。
 いずれにせよ、工藤自身よりやたら面倒なのはその周囲なのだ。
 工藤が責任を感じるようなことはないのに、と良太は思うのだが。
 別荘に戻ると、ダイニングテーブルに、ワインクーラーに冷やした冷酒と杉田のメモが置いてあった。
「お酒を召し上がるのなら、いくつかおつまみが冷蔵庫にあります」
 良太が冷蔵庫を開けると、ナスの煮びたし、里芋の含め煮、キュウリの梅肉和えなど、工藤の好きそうな小鉢がいくつか並んでいる。
「工藤さん、飲むんなら、上に持って行こうか? つまみ美味そう」
「そうだな。お前はいい加減食ってきたんじゃないのか?」
 苦笑しながら工藤が言った。
「日本酒にさっぱり系のおつまみって、また別でしょ」
 良太はトレーに冷酒とグラスや小皿に箸、それに冷蔵庫から出したつまみの小鉢を乗せて二階に上がっていく。
 工藤は戸締りを確認してから階段を上がる。
 紫紀は物静かに見えて実は精力的だ。
 坂口にせかされてドラマの話を持ち掛けたのだが、言葉上は穏やかな対応でも出てくる言葉は先を読んで、紫紀の頭の中では既に情景が見えているようだ。
 まだメイン以外キャスティングも決まっていないのだが、広告戦略や突っ込んだ内容まで次から次へと提案してきた。

 


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