鬼の夏休み31

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 工藤もそれに応じて紫紀の目指す内容に即応するキャストやシーンに合わせた大体のロケ地の候補まで絞り、ほぼほぼ具体的な領域にまで話は及び、改めて紫紀との仕事は面白いと工藤は感慨深げに笑みを浮かべた。
 紫紀はおそらく上に立って指示するだけでは物足りない男なのだ。
 ある意味鴻池と似ているところがあるが、一つ違うのは、紫紀は正義の信望者だ。
 理不尽なことを嫌う。
 鴻池の全てを駒として扱うような冷酷さはもちあわせていない。
「なんかやっぱ、BBQとか、楽しいし美味いけど、においつくなあ」
 ソファセットのテーブルにトレーから酒のボトルを置き、小鉢を並べ、グラスや小皿を置いたあと、良太はくんくんと腕やTシャツの匂いを嗅いだ。
「先に風呂に入ってきていいぞ。俺は適当にやっている」
「あ、じゃあ、とっとと入ってきます」
 風呂に湯を張っているうちに髪の毛が臭う気がしてシャンプーし、ゆすいだ頃には湯が溜まっていた。
 夜になるとぐんと気温が下がり、服を脱ぐと寒い。
 温かい湯に身体を沈めて良太は大きく息をついた。
「俺でこれだけ匂い着くんだから、焼いてる人、かなりすごいよな」
 京助はもともと料理好きなようだから、あまり気にしなさそうだが、涼や大は可哀そうだったよな。
 いくら女避けっつったって、あれじゃ、好きな子だって離れちまうって。
 なるほど千雪さんは匂い着くのが嫌で、俺らの方に避難してたわけだ。
 今になって良太は納得する。
「京助さんと千雪さん、あれって、双方横暴でもどっちかっていうと、京助さんの方が弱いよな、惚れてる分」
 一見して京助の傲慢さに千雪が振り回されているようで、その実、どちらかというと千雪の方が振り回しているようだ。
「まあ、しょうがないよな、惚れてるんだから」
 良太が風呂から出ると、工藤はちびちびやっていた。
 昨日今日、あまり電話もかかってこないので、工藤にしては珍しくゆったりとした時間を過ごしている。
「風呂、今湯を張ってます」
 良太はバスローブを着て頭をタオルでこすった。
「匂いはとれたか? 勝手にやってていいぞ」
「はい」
 いつもより緩慢な動作で工藤は立ち上がり、風呂に入っていった。

 


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