鬼の夏休み32

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 良太も少し冷酒を飲み、美味そうなキュウリの梅肉和えを食べると、さっぱりとした酸っぱさが口の中に広がった。
「うまあ……」
 俺もそろそろ大人の飲みがわかってきたかな、などと呟きながら二、三杯飲んだところで、知らず船をこぎ始めた。
 良太が目を覚ましたのは、けたたましい杉田の朝食コールのせいだ。
「あれ、俺、いつの間に」
 身体を起こした良太は、知らないうちに朝になっている部屋を見回した。
 バスローブのまま、ちびちび日本酒をやっていたのは覚えているが、ベッドに入った記憶はない。
 バスルームから出てきた工藤は、ぼんやりベッドの上で座っている良太に、「起きたか。メシだぞ」と笑った。
 今日もポロシャツにデニムというラフないでたちで、良太はスーツじゃない工藤は新鮮な気がした。
 工藤が出て行ったあと、やっと起き出した良太は、ざっと顔を洗い、身支度を済ませると、階下に降りて行った。
 コーヒーを飲んでいる時にラインにメッセージが入った。
 千雪からで、ランチする? と聞いてきた。
「えっと、十一時くらいに、じゃ、スーツ見てきます」
「ああ、行ってこい」
 良太が工藤に声をかけると、新聞を読みながら、工藤は適当な返事をする。
 良太は、千雪に、了解です、とラインに返し、ポールスミスの店でスーツを見ると告げた。
 食事の後良太は別荘に置いてあるパソコンでデスクワークをこなしていたが、しばらくすると工藤が傍を通りしな、良太の前に会社用のカードを置いた。
「俺はこれから昼寝する」
「おやすみなさい」
 工藤はボソリと言うと、階段を上がっていった。
 ちょっとは休む気になったみたいだな。
 工藤の邪魔はしたくないし、一緒の空間にいるだけでいいか、と良太は思う。
 工藤の背中を見つめながら、良太は笑みを浮かべた。
「こちらはいかがでしょう?」
 スーツを買うために工藤の車を借りてショッピングプラザに出向いた良太だが、どれがどうとか言われても今一つピンとこない。
「えっと、そうですね……」
 スタッフにいくつかスーツを見せられた良太は小首を傾げ、苦笑いした。
「どうぞご試着してごらんください」
「はあ……」
 ファッションセンスは、自慢じゃないが、ない。
 とにかくフィッティングルームに入ろうとした時、「良太」と呼ばれて振り返ると、千雪、と京助が立っていた。
 京助の出現につい怪訝な顔をする良太に、「スーツやったら京助にみてもろたらええ」と、千雪が言う。

 

 

 


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