鬼の夏休み34

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「俺よりええやろ思て、呼んだんやけど、あいつパーティの準備あるし」
「また京助さんが仕切るんですか?」
「いや、藤原さんひとりやと大変やから、忙しくない時はいつもこの手の大きい宴会は京助が一緒に準備しよる」
「へえ、普通、主一家がそこまでしませんよね?」
「藤原さんのことガキの頃から見よう見まねで勝手に習得して、京助、下手すると結構ええバトラーやりよるで。公一に教育してるのも京助や」
「はあ」
「あいつ、興味があることには深く突っ込むたちやから」
 良太は購入したスーツをトランクに入れると、千雪を乗せてランチに向かった。
「旧軽のカフェでしたっけ?」
「前に、通りかかっていっぺん入ってみよ思うとったんや」
 ナビに案内されて辿り着いた店は、ちょっとした林に囲まれた古い木造の建物だった。
 ランチメニューはパスタやカレーと自家製パンが最近ちょっと話題になっているらしい。
「こんな店ありましたっけ?」
 良太も何回か軽井沢に来ているが、この辺りにこんな店があったら覚えていそうなのにと思う。
「最近らしいで。先代の当主が亡くならはって、その息子がこの店を始めたんやて。オーナーがパン職人なんや」
 併設のベーカリーでは美味しそうなパンが並んでいるのが見える。
 樹々に囲まれたテラス席に二人は陣取ると、カレーとパスタのセットをそれぞれ頼んだ。
「カップルとか女の子同士が多いですよね」
 良太は店内を見回した。
「まあ、雰囲気がええもんな」
「いいですよね。ここ、ロケとかOKしてくれるのかな」
 ついボソリと口にしたセリフに、千雪が笑う。
「すっかりプロデューサーやってるやん」
「え、いや、そんな大それたもんじゃなくて、いざって時のストックがないと」
 思いのほか腹が減っていたようで、パスタもカレーもそれなりに美味かったが、「これ、めっちゃうまい!」と舌鼓をうったのは、クロワッサンだ。
「ほんまうまいな」

 


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