鬼の夏休み37

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 千雪はクールに言い切った。
「だけど、母親も恋人も自殺したとか、普通だったらちょっと耐えられないですよ。だから、工藤さん、自殺って言葉に過敏で、前に長年一緒にやってきた業者さんが自殺された時、かなりダメージくらったみたいで、業者さんに少しでも仕事回すようにって、いきなり前にもましてシャカリキになって仕事入れたりして」
 はあ、と良太はため息をついた。
「そうか。工藤さんそういう義理難いとこあるしな。けどまあ、昨日から夏休み珍しゅうとらはったんやろ?」
「はあ、何かドラマの若いタレントが風邪でスケジュールに穴をあけたとかで、怒ってましたけど、ちょうど休みになったからよかったっていうか、急に軽井沢行くって言いだすし」
 千雪は笑った。
「そんなら、ええやん、仕事忘れて羽伸ばせば」
「ですね。さっきも昼寝するとかって」
 良太はちょっと、ほっとしたのだ。
 少しでも休めればと。
 美味しかったクロワッサンを中心にパンをいくつか買ってカフェを出ると、千雪を助手席に乗せて、良太は綾小路の別荘へと車を走らせた。
「千雪さんも何か手伝ったりするんですか?」
「俺は何も。足手まといやて言われるだけやし」
 良太はハハハと笑う。
「フン、これからシルビの散歩にでも行ってあとは部屋で俺も昼寝でもしよ」
「千雪さんも暇なんですか? 今」
「まさか。教授に頼まれた論文のてったい、なかなか終われへんし」
「いつまでこちらに?」
「うーん、明日か明後日?」
「いいなあ。仕事を離れてこんなとこで、目いっぱい心の洗濯したい!」
 良太は声を大にして言った。
「あ、でも、ニャンコズが待ってるしな」
 口にした瞬間、可愛い二つの顔が良太の目に浮かぶ。
「せやな、にゃんこは仔猫の時から連れ歩くとかしてないと、一緒に旅行は難しいな」
「そうなんですよね~」
 やがて綾小路のいつまで続くかわからないような塀が見えてきた頃、向かいに停まった車の傍で、何やら口論している男女が見えた。
 男が二人と女が一人、明らかに言い争いをしている。
「あれ? あの人ら、夕べBBQの時、バイトしてた人ですよね」
 すると千雪は彼らの横を通りしな、顔を確認した。

 


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