鬼の夏休み44

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「青山プロダクションの広瀬良太ちゃん。何とプロデューサーよ」
 理香が紹介すると、周りが沸いた。
「知ってる、青山プロダクションって、中川アスカとか志村嘉人とかいるところよね?」
 誰かが言った。
「え、プロデューサーなの? 新人俳優さんじゃないの?」
「プロデューサーです」
 良太はきっぱりと言った。
「ああ、そうだ、名探偵ものの映画、ヒットさせたとこだよな?」
「そうよ、可愛いからって見くびっちゃだめよ」
 理香は偉そうに言うと、住吉建設の常務高橋、川村物産の広報部長川村、京浜ホールディングス営業部浜村、三友フィナンシャル頭取の娘友田、立川グループ本社営業部営業課長立川、と数人の男女を良太に紹介した。
 するとみんながそれぞれ名刺を差し出したため、両手がふさがっている良太は困った。
「良太ちゃんの名刺はポケット?」
 理香に聞かれて、「あ、はい、左の」と良太が答えると、理香が傍に立つ立川に自分の皿を預けて良太のポケットから名刺入れを出した。
「広瀬良太ちゃん。この子こう見えてT大法学部出てバリバリエリートよ。覚えておいて」
 理香はそれぞれの名刺と良太の名刺を交換し、集めた名刺を良太のポケットに入れた。
 さすが京助のご友人だ、冗談染みていてもちゃんと話したことは頭に入っているのだ。
「じゃ、行こ」
 立川から自分の皿を受け取ると理香は良太を促した。
「あ、すみません。失礼します、皆さん」
 良太はどれもこれも一部上場企業だったな、と軽そうな感じで理香に声をかけてきたメンツが意外だった。
「俺別にエリートじゃないですよ」
「いいのよ、勝手に紹介されときなさい」
「はあ、でも、ありがとうございます」
「だって、工藤さんに恩を売っておかなくっちゃ」
 って、それかよ?!
 良太は少しばかり気が気ではない。
 戻ると、工藤は年配の男と話していた。
「あら、藤田さん」
 理香が声をかけると、フジタ自動車社長、藤田が振り返った。
「おや、理香さんじゃないか。広瀬くんも、久しぶり」
「お久しぶりです」
 良太は皿をテーブルの上に置いて、藤田にぺこりと頭を下げる。
 やはり財界の大物がこぞって集まってるんだ。
 助かった、工藤と理香さん、二人でってことにならなくて。

 


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