鬼の夏休み5

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 七時過ぎに工藤の運転するベンツは乃木坂を出た。
「え、こっちなら俺運転しますけど」
 良太は普段使っているジャガーを刺して言ったが、俺が運転する、と工藤が言うので、良太は必要なものをとりあえず放り込んだバッグを一つ後部座席に放り込んで、助手席に座った。
 慌ててスケジュールを調整してから、自分の部屋に上がり、猫たちのトイレを掃除し、ご飯を用意し、ざっとシャワーを浴びると、とりあえずスーツを着た。
 軽井沢に行くと言われたものの、どういう用事でを聞く前に工藤はオフィスを出てしまったので、バッグにはタブレットや着替を入れている。
 軽井沢にある工藤の別荘には、良太がノートパソコンを一台置いているので、いざとなれば仕事もそこでできる。
「それで、何か急な仕事が入ったんですか?」
 先ほど電話で相手を怒鳴り散らしていた件とは別の物だろうとは良太もわかる。
「綾小路さんに呼ばれている」
「え? 東洋商事がらみ?」
「まあな」
「呼ばれているってことは、あのスキー合宿やったでかい別荘?」
 すると工藤は鼻で笑う。
「そうだ。その、スキー合宿やったでかい別荘に呼ばれてる」
 ちぇ、そういう人を見下してバカにするから、いろいろ言われるんだろうが。
「あ、平造さんに連絡入れました?」
「さっきな。平造は明日から、前々から行けって言っていた人間ドッグだ」
「あ、そうなんだ」
 ふーん、平さんいないのか。
 じゃあ、明日の朝ごはんはなしか。
 平さんの美味しいご飯だけが楽しみだったのにな。
 あっ、でも杉田さんがまた代わりに来てくれるとか?
 杉田は工藤の曽祖父母と懇意にしており、工藤の幼い頃からを知っている家政婦だ。
 何かの時には近くに住む杉田に応援を頼むことがあるが、工藤を、ぼっちゃん、と呼ぶ元気な七十がらみの女性である。
 どうやら、工藤は年上の世話好きな女性には弱いらしく、杉田に小言を言われても怒鳴ったり言い返したりはできないようだ。

 


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