鬼の夏休み53

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 千雪は気楽そうなことを言う。
「はあ、白のベンツとかあるんですか?」
「ダチがディーラーやってんね。大抵の車は用意でけるみたいや」
「ほんとですか? 千雪さん、いろんなご友人がいらっしゃるんですね」
「車、必要な時はいつでも紹介したるで」
「はあ、今んとこ、仕事で乗りまくってるし、自分の車とかはいいです」
 千雪は笑った。
「まあ、ジャガーは良太の車みたいなもんやしな?」
「いや、別にそういうわけじゃ………」
 からかいを含んだ千雪の言葉に、良太は口ごもる。
「いずれにせよ、紫紀さんにはパーティが終わってから報告しとかなあかんな」
「はあ」
 良太はとりあえず、工藤に何も言わずに動いていたので、それこそ報告に戻ろうと、談話室を出た。
 工藤は少し移動していたが、やはり紫紀と一緒で、今度は誰か別の二人と話していた。
 理香も藤田もそこにはいなかった。
 良太を見つけた工藤は険しい顔をしたが、すぐに表情を戻して、話に戻った。
「ああ、いいところにきたね。浜村さん、青山プロダクションの広瀬くんです」
 浜村と呼ばれた男は五十代くらいだろうか、穏やかな顔つきのスマートな男だった。
 その横にいるのは少し若い感じのガッシリタイプの男である。
「広瀬くん、こちらは京浜ホールディングスグループCEO、浜村会長、渡良瀬社長です」
「初めまして、広瀬と申します」
 すかさず良太はポケットから名刺を取り出して、二人と名刺を交換する。
「おや、プロデューサーをやっておられる」
 浜村がにこやかに尋ねた。
「はい、まだまだ若輩者ですが勉強しながら仕事をやらせていただいております」
 良太ははっきりとした声で答えた。
「いや、なかなか将来楽しみな社員さんをお持ちですね、工藤さん」
「ええ、私が出ることが多いので広瀬が社の方を切りまわしております」
 工藤も真面目な顔で言った。
「なるほど、懐刀というわけですね」
 紫紀が工藤に紹介しようと言っていたのがこの二人だろうと良太にもわかった。
 石油産業の分野では日本で五指に入る京浜ホールディングスだ。
 あれ、そういえば、さっき理香さんに紹介されたチャラそうな男が京浜ホールディングスで浜村とか言わなかったっけ?

 


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