鬼の夏休み55

back  next  top  Novels


 良太は浜村らにちょっと頭を下げて、仕方なく理香の相手をする。
「なあんだ、残念。秋の浜離宮のお茶会、あたし、お花を生けることになってるのよ。だから佐々木先生、いらっしゃらないかしらと思ったのに」
「時間が合えばとは思いますけど、先生にお話してみましょうか?」
「え、お願いできる?」
「お話だけですよ? 佐々木さん、芸術には造詣が深い方ですから、お花もお好きだと思いますけど、何せお忙しいので」
「いいわ。良太ちゃんにお任せする」
 理香はどれだけ飲んだのか、ふらっとしたところを良太がちょっと腕を支えた。
言葉はまともだが、スキー合宿の時のことを思い返すと、酒豪らの一人だった。
「理香さん、飲み過ぎじゃないですか? 足元ふらついてますよ?」
「あら、大丈夫よ、これしき」
 はあ、とため息をついた良太は、「すみません、田口さん」とたまたま近くにいた田口を呼んだ。
「申し訳ありません、理香さんをちょっと中で休ませて差し上げてください。あと、お水をお願いします」
 こそっと囁いて、理香を田口に任せた。
「君も、俳優志望? いいセンいってるわよ」
 理香は田口に腕を取られながら、奥へと入っていった。
 良太はホッとして、工藤のもとに戻る。
「勅使河原流の理香さんともお親しいんですね?」
 またしても渡良瀬が良太に突っ込んでくる。
「はい、工藤が以前仕事でご一緒させていただいたので」
 良太は勝手に工藤の話をくっつけて言い訳する。
 この人何を言わせたいんだ?
「ちょっと聞こえてしまったんですが、佐々木先生というと、クリエイターの佐々木周平氏のことでしょうか?」
「はい、よく仕事でご一緒させていただいております」
 おっと今度はそっちかよ。
 京浜ホールディングスのブレインはこの人か。
 広報にも詳しいらしい。
「そうですか。彼の仕事は素晴らしいですね。実は一ファンなのですよ。お会いしたことはありませんが、これまでの業績は聞き及んでいます」
「ええ、とても、常人にはない発想と技量をお持ちです」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村