鬼の夏休み56

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 まさかだけど、仮に会ったとしても、この人まで本人に興味を持たないよな。
 良太は、アディノの広報課長小菅を思い出してげんなりする。
 佐々木さんこそ、沢村以外の人の前ではコスプレとかした方がいいんじゃないか?
 そうだ、コスプレと言えば千雪さん、万事うまくいったのかな。
 田口くんが仕事に戻っているからうまくいったんだと思うけど、後で聞いてみよう。
 良太は工藤の気持ちが少しわかるような気がした。
 こういう場所で、財界人と顔を突き合わせて営業スマイルはきついよな。
 ああ、工藤はそもそも営業スマイルとか知らない人だっけ。
 険しさは抑えているものの、今にもたったかこの場所から去りたいとか思っているに違いない。
 良太は聞かれたことにしか答えていない工藤の顔を見て思う。
 今回、紫紀がいるから、せっかく紹介してもらった相手に、それじゃあ失礼、なーんて言ってバックレられないよな。
 実際、京浜ホールディングスをスポンサーにできれば、それに越したことはないかも知れないが、できなくても東洋グループと鴻池産業だけでも大きなスポンサーだ。
 おそらく鴻池は、仮に東洋グループが離れたとしても最後まで工藤をバックアップするだろうと良太は思う。
 あの執着心は類を見ないからな。
 あれ以来、良太にちょっかいを出すこともなくなったし、ましてや千雪に興味を持つとかもやめたらしいから、よかったけど。
 しかし良太は鴻池に対しては未だに警戒心を解いてはいない。
「うちの広報部は電映社が多いようですが、以前は英報堂さんにもよくお世話になっていました。ただ、当時の営業担当が退社してしまったので。かなりいい仕事をしてくれていたんですが」
 渡良瀬が言った。
 良太が考え込んでいるうちに、広報事業の話になったようだ。
「英報堂とも取引はありますが、元英報堂の河崎さんが立ち上げた『プラグイン』とはちょくちょく一緒にやらせてもらっております」
 工藤は簡潔に答えた。
「その河崎さんですよ、どうですか、彼は今」
 渡良瀬は河崎にかなり興味がある様子だった。
「順調にやられてますよ。先ほどおっしゃっていた佐々木氏と組むことが多いようです」
「本当ですか? それはいいことを聞きました」
 うちのスポンサーはどうかわからないけど、プラグインや佐々木さんには仕事が舞い込みそうだな。
 良太は心の中で頷いた。
 ようやく浜村たちがそろそろ、と言い出してくれたので、良太は思わずため息をつきそうになった。
 浜村と渡良瀬が立ち去ると、紫紀が言った。
「お疲れ様です。工藤さんも良太ちゃんも、肩凝ったでしょう? ちょっと奥で一服されてはどうですか?」
 工藤はすぐにも帰りたそうな気配だったが、「ありがとうございます」と先に良太が答えたので、眉を顰めながら工藤も良太の後に続いて奥の応接間に通された。

 


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