鬼の夏休み6

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 ま、杉田さんもいなければ、コンビニで何か買ってくればいんだし。
 工藤は二の次三の次にしがちだが、食事は大事だ、と良太は子供の頃から母親に言われて育った。
「だめよ、朝ごはん、ちゃんと食べないと、お勉強も頭に入らないわよ」
 主に言われていたのは、思春期、太るのを気にして牛乳だけで出て行こうとする亜弓だったが。
「お兄ちゃん、学校遅れるよ」
 妹にせかされながらもしっかり朝ご飯を食べきってから出るのが良太だった。
 思えば、青山プロダクションに入ったばかりの頃、父親が背負わされた負債をどれだけでも返そうと、食事を抜いて経費を浮かせようとした時が一番きつかった。
 例えば悪いやつらに捕まったとして、金庫のナンバーとか言わないと食わせないぞ、なんて言われたら、俺、即、しゃべりそう。
 んで、お払い箱であっけなく殺されるんだ。
「田園の方はどうだ?」
 赤信号で停まると、工藤が聞いてきた。
「いや、順調、ですよ。月末あたりから北海道ロケになってますけど、行けそうですか?」
「この分だと無理だろうな」
 はいはい、そうでしょうとも。
 それで俺に丸投げってことですよね。
 まあ、さっき怒鳴り散らしていた相手は、今工藤が関わっているドラマの準主役で、ヒロインの彼氏という役どころの若手俳優だが、どうもドラマの進捗状況がよくないようだ。
 このドラマも、長年一緒にやってきた制作会社の社長が昨今の不景気で皺寄せを食らって自死した直後、少しでも制作会社に仕事を回そうとしゃかりきになってそれまでの工藤なら断っていただろう仕事も受けたりした、そのうちの一つで、その頃の工藤はただでさえ万年人手不足で仕事は飽和状態だったのにも関わらず、以前にも増して走り回っていた。
 さすがの工藤もそんな状況が続き、良太も工藤の手助けをしようと動いたりしてオーバーワーク気味だったため、映画「大いなる旅人」の撮影も始まったこともあって、最近少しは仕事量を抑えるようになった。
「からくれないに、はどうなってる?」

 


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