鬼の夏休み61

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 フン、つい箍が外れてしまった。
 寝落ちた良太が起きる気配のないことを見て取ると、工藤はシャワーを浴びに立ったが、コックをひねりながら、心の中で呟いた。
 ここの空気が助長させるのか、夏の名残にけしかけられたのか、財界の大物連中相手に負けじと背伸びをしていた良太が可愛いかったのと、女たちに絡まれていたのがイラついたのとが心の中でせめぎ合い、情動へと駆り立てた。
 何よりあれだ。
 ちょろちょろうろつく良太に、俺の傍にいろと、つまらん独占欲だ。
 俺の本音なぞ、そんなところだ。
 工藤は自嘲し、シャワーを止めた。
 タオル一枚を腰に巻き付け、バスルームを出ると、工藤はベッドの上で眠り込んでいる良太のあどけない顔を見て笑みを浮かべた。
 常に平造がサイドボードに置いてくれているマイヤーズをグラスに注ぎ、ベッドに座って香りを味わった。
 以前はそこで必ずと言っていいほど煙草をくゆらせていたものだが、最近はたまに手持無沙汰に指が動くことがあるものの、煙草を探し回るようなこともなくなった。
 良太が煙草の本数を減らせと、ことあるごとにしつこく言うからだ。
 お陰でよほどイラついている時に煙草が近くにあれば吸うのだが、ニコチンが切れてもさほど慌てることもない。
 アスカなどは、最初からずけずけと臭いがつくからやめて、だ。
 おまけに最近は平造までが良太にならうように、本数が多いと文句を言うようになった。
 アスカはどうでも、良太や平造が工藤の身体を心配して言ってくれるのはわかっていたし、成り行きで自然と煙草が遠のいた。
 第一ここ数年、病院はもとより企業も禁煙を全面に出すようになったため、喫煙者の肩身が狭くなった。
 わざわざ喫煙スペースを探してまで煙草を吸うのも面倒だ。
 ラム酒を口に含みながら、工藤は少し空気の冷たさを感じた。
 エアコンは入れていないが、ここのところ夜の気温が下がってきたらしい。
 時間は着実に流れているな。
 グラスを空にすると、工藤はタオルを傍の椅子に放り、良太の横にもぐりこんだ。

 


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