鬼の夏休み66

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 工藤にとっては降ってわいた休日だったが、良太には少々いい迷惑な軽井沢行きだったかも知れない。
 にしてはまあ、結構千雪らと会って楽しんでいたようだが。
 いきなり出くわした窃盗犯の捕り物も、無事捕まえてみれば東京に戻ってからも面白い土産話だ。
 こちらとしては金輪際、良太に捕り物だの何だのに関わってほしくはないが。
 まるで示し合わせたかのように電話が来ないというのも、妙な話だと思った工藤だが、今日帰るまでは携帯の電源も切っておくか、といつになくゆったりとした面持ちで新聞をめくる。
 実際、電話が来そうな相手、藤田などは、綾小路のパーティに出向いていたし、美聖堂の斎藤は今夜会うことになっている。
 今制作中の映画『大いなる旅人』の京都、ニューヨーク編で、ぜひ使ってほしいタレントがいるといつぞや頼み込んできたが、どのみちその話だろう。
「そういえば、二村桃子さんですけど」
 良太が工藤の声が聞こえたかのように言った。
「ちょっと調べましたけど、雑誌なんかで人気はあるみたいですが、CMは色々出てますけどローカルのが多いです。演技の方のキャリアは、以前、同じサンプロダクションの実力俳優と一緒にちょい役で出てますが、それ以外はこれと言って目立った業績はないみたいです」
「フン、そんなとこだろう」
 工藤は新聞から目を離さずに答えた。
「映画デビューで一躍って感じで売り出したいんじゃないですか?」
「技量があればな」
「はあ。アダチスタジオの三名の方々は、日比野さんの推薦ですし、それなりに力はあるんじゃないですか? ほんのワキになりますけど」
「とりあえず、お前がちゃんと見ておけよ」
「はい」
 東京でのロケからというから、少し先の話になるが、タレント、役者、人気商売だから売り込み方如何で、これからの道筋が決まることもある。
 やっぱ、俺は、そういうの、苦手だな。
 良太はタレント業はやめておいて正解だったと、今さらながらに思う。
 こうして勝手なことを言って、タレントを使う方がえらそうだしさ。

 


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