鬼の夏休み68

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 良太は二階に上がり、荷物をまとめて帰る準備を始めたのだが。
 ってか、その人が全ての元凶なんじゃないか?
 またぞろ、工藤の祖母のことが頭に舞い戻る。
 恋を貫くとは聞こえはいいけど、相手が相手だったから娘さんも不幸になったし、工藤も全く関係もないのに、今なお警察にはヤクザのレッテルを貼られているわけで。
 他人事ながら良太は憤りを感じざるを得ない。
「しかし、こんな、スーツ色々買って、どうすんだよ」
 こんなブランド物のスーツなんて、ちょっと雑用やお遣いで着て行けるもんじゃないし。
 買ってもらって文句を言うのもなんだが、さすがにうちの社員がつるしなんか着るなと工藤に釘を刺されてからは、工藤が紹介してくれたオーダーの品よく良太にぴったりのスーツを愛用しているし、仕事というよりはパーティとかくらいしか着られない。
 秋山さんはでもおしゃれに着こなしてるよな、似合うし。
 青山プロダクションの所属俳優中川アスカのマネージャー秋山は、元エリート商社マンで、よく見るとブランド物のスーツをさりげなく着こなしている。
「俺がマネしてもスーツが浮くって」
 未着用のスーツと昨夜着たクリーニング行きのスーツを別にしてペーパーバッグに入れると、あとはスエットを軽井沢に来るときに着てきたスーツに着替えて、リュックにタブレットや細々したものを入れて終わりだ。
 ふっと息を吐くと、良太はベッドに座った。
 上掛けを被せたものの、本当はシーツなんか引っぺがして洗濯機に放り込みたいところだ。
 まったくあの、エロオヤジと来た日には!
 たまに休みになったからって、羽目外しまくりやがって!
 こっちは足腰まだちょっとぎくしゃくしてんだ、ほんとは!
 どっちかってと、工藤もその祖母の気質を受け継いだんじゃないのか?
「やりたいだけやりやがって!」
 つい、思っていることが口から出てしまう。
 だが、何だかだいっても、とどのつまり工藤にやられて悦んでいたのは俺じゃん!
 考えるとかあっと顔が熱くなる。
 あんな風な工藤を見ると、ちょっとは愛されてるんじゃんとかも思いたくなる。
 多分、ちょっとは………な。

 


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