鬼の夏休み7

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「そっちも順調です。本谷くん、頑張ってるし。相変わらずマネージャーいなくて、アッチの事務所に頼むのもめんどくさいから、こっちからついでってことにしてスタッフさん一人専属で、やっぱ一人で動いている脇の俳優さんたちと一緒に送迎してもらってます」
 本谷の送迎については工藤には報告していなかったが、これは正解だと良太は思っている。
「それでいい」
「本谷くん、半端なく人気急上昇ですよ。それも女子小中高生から女子大生、主婦層まで幅広いんで、特に若い小中高生ってどういう行動にでるか予測つかないですからね。あ、だからようやく、タレント御用達のオートロックのマンションに引っ越したみたいですよ、本谷くん」
 工藤はフンとほくそ笑む。
「ミタは昔から数人の売れっ子以外その他大勢扱いだ。ここのところ所属タレントの不満が噴出しているらしい」
「やっぱね~。タレントたくさん抱えてる事務所はもっと大手でもありますけど、あんな極端な待遇じゃ不満も出ますって」
 本谷のマネージャー浜野が、本谷のファンが溢れたせいで良太が怪我をしたことに対して見舞金を持ってきた時のことを思い出して、良太は眉を寄せた。
 浜野は本谷以外に中堅どころの女優も受け持っていて、しかも社長の縁戚だということでそちらを優先しがちのため、元々営業マンでしっかりしている本谷はずっと一人で行動し、公共交通機関を利用して撮影に出向いていたりした。
 ここのところドラマやCMに立て続けに出ている本谷の人気は一気に上がってきたが、会社の待遇はまだその他大勢のままだ。
 さらに本谷のことでは、何となく解消しつつあるものの、良太の中には大きなわだかまりが一つあった。
 工藤には話していないが、本谷が工藤に告白しているところに、良太は遭遇してしまったのである。
 以来、怒鳴り散らすのが専売特許のはずの工藤がやたら本谷を気にかけたりするのを見るにつけ、工藤の気持ちが本谷に向いているのではという邪推で、良太はしばらく地の底まで落ち込んでいた。
 どうやら邪推でしかなかったのかも、という結論にとりあえずは落ち着いたのだが。
 いやあ、俺以外にも、オヤジに告るやつとか、いたんだな、これが。
 本谷が今、工藤に対してどう思っているのか、相手が工藤でなければと、重々身につまされる良太なのだ。

 


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