鬼の夏休み70

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 こういうメンドクサイ昭和なオヤジとつきあうとかって、ほんと色々大変だよな。
 パワハラだし、怒鳴るし、こき下ろすし、嫌味言うし、それに勝手だし。
 良太は他人事のように心の中で呟くと、ひとつ溜息をついた。
 ってか、何で俺、こんなメンドクサイオヤジ好きなんだろ。
 自分で自分の科白に赤面しつつ、良太は唇を閉じたり尖らせたりして、眉を寄せた。
 それに、俺みたいなやつが他にもいたりするし。
 本谷とか。
「今度は何の百面相だ?」
 前を見ているはずの工藤が、ボソリと言った。
「いや、別に。っつか、明日からの仕事のことを考えてただけで」
 バツが悪くて咄嗟に良太は適当なことを言った。
「そういえば、風邪で俳優さんがスケジュールに穴を開けたっていうドラマは明日は撮影あるんですか?『明日は絶対』でしたっけ?」
 気になっていたことを聞くと、「明後日からだ」と工藤は吐き捨てるように言う。
「もともと十一月から大河ドラマに出演が決まってる主演の大越美里のスケジュールに合わせて撮影してる。ぽっと出の俳優が風邪で穴を開けるとか、大越の事務所は激怒だ」
「あらら………」
 いやそれ、工藤の言うように、やってれば熱なんか下がると思ってこないだ出てくるべきだったよな、その新人俳優。
 よほどシャカリキにやらないと、次、苦労するぞ。
「まあ、明後日ちょっとしぼってやる」
 うわ、怖わ………。
 その新人さん、ご愁傷様。
「『からくれないに』も本谷、見とけよ。最初よりはマシになったが、キーはあいつだからな」
「はい、わかりました」
 いや、本谷はマシになったよ。
 最初の頃とは雲泥の差じゃん。
 ただ、工藤がしばらく『からくれないに』に顔を出せないのは、良太にとっても工藤のことを妙に勘ぐったりしなくていいだけ、有難いかもしれない。
 あーあ、明日からまた同じような日常が続くんだ。

 


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